#��_06 ページ8
｢高雅、貴様の役目は”皇存続”だ。｣
子を成し、この家を未来永劫存続させろ。
久々に座る父の部屋の椅子。
虚ろな目で爪先を見つめる姿に苛立ちが募った。
｢貴様が成人し、この家の正式な当主になるまでこの家の敷地から出ることは許さん。｣
これ約束ではなく、命令だ。
一方的に告げて、部屋の外に待たせていたメイドたちに彼を連れて行かせる。
ようやく、ようやく動き出した。
煮え滾るような喜びと、身体中から力が抜けるような安心感。
皇の器として最も相応しい、末の息子。
ようやく器が戻ってきた。
｢……手間をかけさせおって｣
だがそう呟く横顔は酷く上機嫌で、楽しげだ。
執事に申しつけてワインを注がせ、グラスの中の赤色を一気に流し込む。
きっと彼奴はこの選択は己のせいだと思い込み、絶対にあの命令は破らない。
｢貴様が考える策如き、読めんとでも思ったか!!｣
笑いが込み上げる。
腹を抱えて笑う男を見ても、執事は一切表情を変えない。
あの崩壊が自然なものだとよく思えたものだ。
タイミングが良すぎるだろうに。
相当冷静さを欠いていたと見える。
空になったグラスを差し出せば、無言でワインが再び注がれた。
上質で円やかな味。こんなに味覚働くのは一体いつぶりだろう。
｢……こうも順調では面白くないな｣
ふと沸き上がる悪戯心。
完璧に事が進みすぎている。
少しくらい読めない動きが欲しい。
ふと思いついた案。
口元に笑みを浮かべ、手元のベルを鳴らした。
｢お呼びでしょうか、旦那様｣
｢処分させた書類はどこに？｣
呼ばれたメイド長たる女はしずしずと頭を垂れ、男の前で腰を折る。
男の問いに表情を変えるでもなく、女はかしこまりましたとだけ口にして部屋を出た。
”立入厳禁”と赤文字で描かれた白い金属板。
それが貼られたドアを押し開け、電気をつけて階段を下っていく。
少し温度の低い空間。
ぱち、と安っぽい音が響くと同時に、ライトが点滅してから人工的な明るさを連れてきた。
無数に並んだ段ボール。
1、2、とだけラベリングされた中から探し出すのは流石に面倒だ。
｢10年前の物はどこに？｣
｢恐らく此方です｣
差し出されたのは”3”とラベリングされた段ボール。
埃を被ったそれを開け、数枚紙を捲れば目当てのものが出てきた。
これだけあれば十分だろう。
雑に角を揃え、メイド長にそれを差し出す。
｢あの新米に渡す書類に混ぜておけ。｣
｢……仰せのままに｣
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湯葉(プロフ) - 夜さん» ありがとうございます!!とても嬉しいです!! (2020年10月5日 6時) (
レス) id: cb66408181 (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 原作ではないお話も入っているのでいつもハラハラドキドキしながら読んでます！この先でもし、世界戦に主人公が選手として出場するなら味方として出ても、決勝戦で敵として立ちはだかってもどちらの展開でも面白そうですね！これからも応援してます！ (2020年10月4日 18時) (レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
湯葉(プロフ) - 常備薬さん» ありがとうございます!!これからも頑張ります！ (2020年9月27日 21時) (レス) id: cb66408181 (このIDを非表示/違反報告)
常備薬(プロフ) - ドキドキしながら読んでます！やっぱり面白いです！ (2020年9月25日 22時) (レス) id: 074c2be95c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湯葉 | 作成日時：2020年9月21日 12時
