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｢なんで……なんで豪炎寺だけを巻き込んだ｣
｢……本当なら誰も巻き込みたくなかった｣
苦しげな言葉。
舌打ちをひとつ零してから手を離せば、床に尻もちを着いた彼は顔を歪めるでもなくただ俯く。
”誰も巻き込みたくなかった”。
彼の言葉に、腹の底から怒りが湧くのを感じた。
｢アンタなら巻き込まないことも出来ただろうが!!
＿＿
彼が目を見開く。
ふわりと窓から入ってきた風が、少しだけ伸びた黒髪を揺らした。
ふと引き寄せられる感覚。
小刻みに震える手が、不動の胸元を掴んでいた。
ゾッとするほどその手は冷たい。
｢ああそうさ、”僕のミス”だ!!
皆の前でヒロの名前を出したことも、彼処で父さんを騙しきれなかったことも、修也や白竜を巻き込んだことも!!
＿＿全部、”僕のミス”だよ!!｣
サッカーに出会ったことも。
小さな声で呟いた彼に不動は目を見開く。
優しい微笑みと柔らかな声。彼を象徴するようなその二つは今や見る影もない。
ぎり、と歯を食い縛るような音。
ギラギラと異様に輝くその瞳は、なんだか泣きそうだった。
それを見てハッとする。
見覚えがあった。
泣きそうなのに、強がっているようなその目に。
＿＿泣くのを我慢している、幼子の目だった。
眉間に皺を寄せ、態とらしく舌打ちをする。
どうやらその音で我に返り、落ち着いたらしい彼が深く長い溜息を吐き出した。
｢……ごめん、取り乱した｣
｢”硝子の支配者”サマでも怒鳴ったりすんだねェ｣
忘れてくれ、と微笑む顔はいつも通りに戻っている。
きっとその微笑みを、豪炎寺も佐久間も鬼道も守りたいと思ったのだろう。
可哀想に、という気持ちは案外混じり気のないものだった。
彼が”ヒロ”という名の少年以外を目に映す日はきっと来ないし、もし映ったとしてもそれは何処かでその人に”ヒロ”を見出しているからだ。
きっと彼に救われ、彼に見出され、彼を救いたいと思っている人々は不動の忠告に対して分かっている、と噛み付くのだろう。
そしてその言葉はきっと当人たちにとって紛れもない真実だが、他者からすれば戯言で虚言に過ぎない。
分かっていたらそもそもこんな底なしの冷たい暗闇に手を差し伸べようとしないだろう。
温かくて柔らかな彼の声に落ちる影は、どこまでも暗くて冷ややかだった。
｢……かったりー生き方してんねェ｣
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湯葉(プロフ) - 夜さん» ありがとうございます!!とても嬉しいです!! (2020年10月5日 6時) (
レス) id: cb66408181 (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 原作ではないお話も入っているのでいつもハラハラドキドキしながら読んでます！この先でもし、世界戦に主人公が選手として出場するなら味方として出ても、決勝戦で敵として立ちはだかってもどちらの展開でも面白そうですね！これからも応援してます！ (2020年10月4日 18時) (レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
湯葉(プロフ) - 常備薬さん» ありがとうございます!!これからも頑張ります！ (2020年9月27日 21時) (レス) id: cb66408181 (このIDを非表示/違反報告)
常備薬(プロフ) - ドキドキしながら読んでます！やっぱり面白いです！ (2020年9月25日 22時) (レス) id: 074c2be95c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湯葉 | 作成日時：2020年9月21日 12時
