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｢豪炎寺、少しいいか｣
｢佐久間か｣
大丈夫だ、と浅く頷いた豪炎寺に少しだけ肩の力が抜けるのを感じた。
そっと円堂たちを横目に輪から離れ、水道の近くの日陰まで歩いていく。
比較的穏やかな日差しといえど、ここまで動けば真夏の照りつけるような日差しと大差ない。
額の汗を袖で拭い、小さく息を吐き出した。
｢それで、何の用だ｣
豪炎寺の目に、微かに顔を引き攣らせた自分が映る。
ぎゅ、と掌に爪が食い込んだ。
｢高雅さんは、今何処に｣
僅かに震えた声。
豪炎寺の顔が、辛そうに歪む。
それでも豪炎寺は佐久間から目を逸らさずに、はっきりと口にした。
｢俺からは、言えない｣
思わず目を見開く。
ふ、と豪炎寺が耐えられなくなったように顔を背けた。
どうして、と吐き出した声は今にも消えてしまいそうな程に掠れている。
佐久間の琥珀色の瞳が揺れた。
｢……言えない｣
｢ッ……!!ふざけるな!!｣
怒りとも哀しみとも言い表せない、激情。
佐久間の叫びに込められたその激情に、豪炎寺が唇を噛み締める。
豪炎寺の肩を佐久間が掴む。
呻くほどの力が込められた佐久間の手を、それでも豪炎寺は振り払おうとしなかった。
｢何故ッ……何故、お前が!!｣
｢ッ!!｣
自分では手を伸ばしても届かない。
人それぞれ、”限界”があるのだと知ってしまった。
それでも自分の気持ちは止められないし、今更後には退けない。
自分の限界と感情に追い詰められていた時、彼が手を差し伸べてくれた。
誰が手を伸ばしても届かぬところにいる彼。
そんな彼だったからこそ、救われた。
『大丈夫。君には他の人にない”才能”がちゃんとある。』
胸を張れ、前を向け。
彼は優しく行くべき道まで連れていってくれた。
少しでも彼の助けに。
そんな気持ちの自分を彼は拒んだりしなかった。
ただ微笑んで、ありがとうと言ってくれた。
自分が道から外れたあの時。
自分のやっていることは正しいと信じていたあの時。
彼はそれでも必死に手を伸ばしてくれた。
ただでさえ脆い身体を酷使してまで、彼は自分を救ってくれた。
あの日。
彼が消えた、あの日。
絶望した。
神も希望も存在しないことを知ってしまった。
＿＿自分を救ってくれた彼の力になりたい、という気持ちすら、彼にとっては迷惑だったのだろうか。
時折感じる彼の気配。
それは悩ましげな表情をする豪炎寺に染み付いたものだった。
豪炎寺が佐久間の目を見て、低く呟く。
｢……兄さんを、救うのは俺だ｣
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湯葉(プロフ) - 夜さん» ありがとうございます!!とても嬉しいです!! (2020年10月5日 6時) (
レス) id: cb66408181 (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 原作ではないお話も入っているのでいつもハラハラドキドキしながら読んでます！この先でもし、世界戦に主人公が選手として出場するなら味方として出ても、決勝戦で敵として立ちはだかってもどちらの展開でも面白そうですね！これからも応援してます！ (2020年10月4日 18時) (レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
湯葉(プロフ) - 常備薬さん» ありがとうございます!!これからも頑張ります！ (2020年9月27日 21時) (レス) id: cb66408181 (このIDを非表示/違反報告)
常備薬(プロフ) - ドキドキしながら読んでます！やっぱり面白いです！ (2020年9月25日 22時) (レス) id: 074c2be95c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湯葉 | 作成日時：2020年9月21日 12時
