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あれを呪いと言わずしてなんと言うのだろうか。
死ね、だけではなく自ら死ね、と彼の父は彼に刷り込み続けていた。
『……薄らとだけど覚えてる。
きっと父さんもそうやって言われてきたんだろうね。』
ぞ、と背筋に寒気が走る。
全く変わらない声色が空恐ろしい。
だとしても、と彼女は握った拳を震わせた。
｢だとしても……貴方にしていいことじゃなかった!!｣
『……ありがとう』
彼女が目を見開く。
その表情が彼に伝わることもないし、彼がどんな顔でこちらの話を聞いているかも分からない。
ただ、感謝の言葉を述べた声は暖かかったのに酷くぼんやりとして聞こえた。
｢……このままじゃ高雅はあの人に殺される。
冗談なんかじゃなくてそう思ったわ。
だから従兄弟の柳に相談して、あの子をこっちの家に連れてくることを計画した。｣
全部順調なはずだった。
彼女が呟く。
乾いた唇を湿らせようとティーカップから冷めた紅茶を流し込めば、冷たい苦さだけが口内に残った。
｢八年前の一昨日。
柳が寝ている高雅を連れてきて、私の部屋に来た瞬間にあの人が私の部屋の扉を開けた。｣
『……最初から分かっていた、ってことか。』
教えてくれてありがとう、と彼女に告げる声は柔らかなままで変わらない。
”最初から分かっていた”。
だがきっと、彼も彼女の話を聞く前から恐らく
恐ろしい自分の夫。
そんな男の血を受け継ぐ息子を、彼女は間違いなく愛していた。
『じゃあ本題。
母さん、俺のおじいちゃん＿＿皇大雅について何か知ってる？』
彼女の肩が跳ねる。
明らかにおかしな反応に豪炎寺は眉根を寄せ、その隣に座っているマシロも不思議そうな顔で彼女を見た。
｢……高雅、貴方何してるの｣
『賭けだよ』
ばっと彼女が顔を上げ、端末を持ち上げる。
正気なの、と問う声は絶叫に近しかった。
『正気だし、何があっても僕は勝たなきゃならない。
……大切な人をもう失いたくないんだよ』
｢だからといって……ッ!!｣
あの男に挑むのは正気じゃない。
そう言いたいのだろう。
彼の吐いた優しくて大きな嘘に俯いてしまう。
賭けに乗ったのは彼じゃない。自分だ。
それでも勝つ為なら、誰かを騙すことだってしなければならない。
＿＿それが例え、彼を心から愛してくれている母親だとしても。
｢今すぐやめなさい!!｣
『母さんの言うことでもそれは聞けない』
もう後悔しないって決めたんだ。
彼の声は、酷く静かだった。
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湯葉(プロフ) - 夜さん» ありがとうございます!!とても嬉しいです!! (2020年10月5日 6時) (
レス) id: cb66408181 (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 原作ではないお話も入っているのでいつもハラハラドキドキしながら読んでます！この先でもし、世界戦に主人公が選手として出場するなら味方として出ても、決勝戦で敵として立ちはだかってもどちらの展開でも面白そうですね！これからも応援してます！ (2020年10月4日 18時) (レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
湯葉(プロフ) - 常備薬さん» ありがとうございます!!これからも頑張ります！ (2020年9月27日 21時) (レス) id: cb66408181 (このIDを非表示/違反報告)
常備薬(プロフ) - ドキドキしながら読んでます！やっぱり面白いです！ (2020年9月25日 22時) (レス) id: 074c2be95c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湯葉 | 作成日時：2020年9月21日 12時
