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違うの？と小首を傾げる彼女に大慌てで首を左右に振る。
自分たちは兄弟ではない、ということを伝えれば信じていない様子ながらも彼女は頷いた。
｢お……僕たちの何処に、兄弟らしさを｣
｢だってマシロくんをみる修也くんの顔、とっても”お兄さん”だったわよ。｣
俺、と言いかけて慌てて言い直せば、なんてことないような表情で彼女が言った。
それを言うなら彼とマシロの方が兄弟らしい。
そう言いかけて口を噤む。
彼がマシロを見る目に、マシロは映っていないことを思い出してしまったから。
恐ろしかった、あの目。
それでも彼は止められなかった。
目の前で無邪気に微笑む彼女なら止められたのだろうか。
そんな考えを振り払って、言われた言葉を飲み下してから顔を上げた。
｢教えて下さい。八年前、何があったのか。｣
｢……あの子の考えを聞かせて頂戴。｣
いるんでしょう、と強い光が射るのはマシロ。
怯えたように此方を見るマシロに浅く頷き、持たせていた端末をテーブルの上に置いた。
こと、と微かな物音に彼女の顔が強ばる。
物音ひとつしなかった画面の奥から、唐突に雑音が聞こえ始めた。
『聞こえてる？』
｢高雅ッ!!｣
悲鳴のような声で彼女が叫び、端末に縋り付く。
細い指先がなぞる端末は僅かに暖かかった。
『久しぶり、母さん。
直接会いに行けなくてごめんね。』
｢いいの、いいのよ……｣
貴方が無事ならそれで、と絞り出す声は泣きそうなくらいに震えている。
その声を聞いても尚、画面の奥の彼は声色を変えない。
いっそ無慈悲なくらいに冷静で抑揚のない声で、彼は淡々と語り始めた。
『僕が父さんに母さんは重い病気で入院している、と告げられたのは八年前。
＿＿ちょうど、ヒロが死んだ二年後の命日だった。
当時凄く驚いたから日にちははっきりと覚えてる。
何度もお見舞いに行けないか、と父さんに縋りついたのもね。』
彼女の表情は張り詰めたまま変わらない。
画面の奥の声は淡々と、それでいて穏やかに響く。
『疑ったこともなかったよ。
”母さんが重い病気で都会の遠い病院に入院している”って話も、”感染ってしまうかもしれないからお見舞いには行けない”っていう話も。』
そんな病気ならとっくに母さんの訃報は聞いていてもおかしくないのにね、と言う呟きはノイズの中でもはっきりと聞こえた。
『思い出したんだ、十年以上前にヒロたちと旅行に行った時の話を』
紅茶は、すっかり冷めきっていた。
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湯葉(プロフ) - 夜さん» ありがとうございます!!とても嬉しいです!! (2020年10月5日 6時) (
レス) id: cb66408181 (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 原作ではないお話も入っているのでいつもハラハラドキドキしながら読んでます！この先でもし、世界戦に主人公が選手として出場するなら味方として出ても、決勝戦で敵として立ちはだかってもどちらの展開でも面白そうですね！これからも応援してます！ (2020年10月4日 18時) (レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
湯葉(プロフ) - 常備薬さん» ありがとうございます!!これからも頑張ります！ (2020年9月27日 21時) (レス) id: cb66408181 (このIDを非表示/違反報告)
常備薬(プロフ) - ドキドキしながら読んでます！やっぱり面白いです！ (2020年9月25日 22時) (レス) id: 074c2be95c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湯葉 | 作成日時：2020年9月21日 12時
