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｢……じゃあ兄さんはその書類に書かれてた場所が怪しいって思ってるんだな？｣
｢そうなるね｣
こくりと頷いた彼。
豪炎寺に手渡した資料とは別の資料がその手には握られていた。
母が亡くなる前、夕香が事故に遭う前。
よく家族四人で夏に避暑地や山の奥にあるコテージに泊まりに行っていた。
見覚えのある地名を指先でなぞり、小さく息を吐き出す。
懐かしい思い出に少しだけ頬が緩んだ。
｢まあ此処に書かれた”何処か”に行けば”何か”が分かるのは確実だろうね。
……気になるのはこっちだよ。｣
そう言って手渡された書類。
びっしりと印字された文字の共通項に気づき、首を傾げた。
｢”デイサービス”、”家事代行”...…？｣
｢僕も最初は新しいビジネスについての資料かと思ったんだけどね。｣
でも最近はインテリアショップの方で忙しいみたいだし、と真剣な様子で呟く。
｢それにリゾート地開発ならデイサービスとか家事代行なんて調べる必要が無い。｣
高齢者向けの住宅にしては立地が悪すぎるしね、と肩を竦めて豪炎寺の手から自分の方へと書類を戻した。
おそらく相当調べたのだろう。
明瞭な声に縁取られた言葉は歯切れが良い。
｢……だけどそれ以外に思い当たる節はない、ってことか？｣
｢そうだね｣
恐らくあのメイドの持ってきた書類の中にこれらを混ぜたのは父の仕業だ。
此方がどう出るかを見ている、というところか。
｢……黄ばんでないか？｣
｢よく気づいたね｣
恐らくかなり古いものだと思われる、と言う旨のことを伝えれば納得したように豪炎寺が頷いた。
｢あの子……マシロとは、どうやって｣
｢少し前にうちの庭に忍び込んだらしくてね。｣
窓にボールが当たったからそれで気づいた、と微笑む顔はなんだか可笑しそうだった。
それこそ新しく弟ができたような気持ちなのだろう。
おにいさん、と呼ばれる度に彼の顔はわかりやすく緩む。
｢毎日来るのか？｣
｢そうだね｣
聞けば殆ど毎日来て熱心にサッカーの練習をしていくらしい。
｢凄く飲み込みが早いんだ｣
｢そうなのか｣
噛み締めるような呟き。
強い光を、意志を感じさせる眼差しに気づいてしまった。
思わず彼の肩を掴み、目を合わさせる。
それでも彼の瞳の色は変わらない。
それでも彼の気持ちは変わらない。
｢兄さん、そんなことしたって｣
｢……ごめんな、修也｣
僕はヒロがいない世界に耐えられない。
決して赦されない罪を、彼は背負うことに決めたのだ。
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湯葉(プロフ) - 夜さん» ありがとうございます!!とても嬉しいです!! (2020年10月5日 6時) (
レス) id: cb66408181 (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 原作ではないお話も入っているのでいつもハラハラドキドキしながら読んでます！この先でもし、世界戦に主人公が選手として出場するなら味方として出ても、決勝戦で敵として立ちはだかってもどちらの展開でも面白そうですね！これからも応援してます！ (2020年10月4日 18時) (レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
湯葉(プロフ) - 常備薬さん» ありがとうございます!!これからも頑張ります！ (2020年9月27日 21時) (レス) id: cb66408181 (このIDを非表示/違反報告)
常備薬(プロフ) - ドキドキしながら読んでます！やっぱり面白いです！ (2020年9月25日 22時) (レス) id: 074c2be95c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湯葉 | 作成日時：2020年9月21日 12時
