#��_20 ページ22
書庫から持ってきた大量の本。
どれも皇家に関する文献だった。
取り敢えず、と手に着けたのはいいものの、いかんせん量が多すぎる。
手近にあった紙に気になった内容を書き付けながらの作業だから余計に終わりが見えない。
ぐーっと伸びをして欠伸を漏らせば控えめなノックの音が響いた。
｢はい、どうぞ｣
｢失礼致します、高雅様ッ……!?｣
つるん。
見事なまでの滑り方だった。
飛び散った書類を眺め、そういえばと思い出す。
この部屋に何かを持ってくるのはいつも、彼が生まれる前からこの家に勤めているベテランのメイドだった。
今目の前で青褪めた顔をする、このメイドではない。
床に落ちた書類を一枚拾い、なんの気もなしに並ぶ文字を眺めた。
思わず眉間に皺が寄る。
こんな資料、届くなんて聞いていない。
いくつかの美術品についての資料を届ける、と昨日父は言っていたはずだ。
｢……父さん、新しい事業の話とかしてました？｣
｢え、い、いえ……インテリアショップの規模拡大のお話を電話越しに誰かとしていたのはお聞きしましたが……｣
それは聞いたことがある。
その意見を求めているから、男は彼にわざわざ美術品の資料なんて届けたのだろう。
取り敢えず二人で散らばった書類を集め終え、適当に角を揃えてから立ち上がった。
｢あの、本当に……｣
｢お気になさらず。
滑りやすいと言っていなかった僕が悪いので｣
そんなことは、と食い下がるメイドに苦笑を漏らす。
そういえばいつも来てくれる彼女は新人の教育が大変だ、と言っていた。
確かにこんな様子では大変だろう。
心の中で彼女に同情し、目の前で謝り倒す新米メイドを何とか部屋から追い出した。
どうやら混じっていたあの一枚は偶然でもミスプリントでもないらしい。
同じような資料が続いている。読めば読むほど混乱していくのが分かった。
｢……新しいビジネスではない、か。｣
それなら何故、こんなものがここにある？
紙を見て眉根を寄せた。
先程の紙が紛れていた紙束から一枚資料を取りだし、横に並べる。
明らかに先程の紙は黄ばんでいた。
経年劣化。つまりあの紙は相当昔からあったことを意味する。
｢”◯◯町デイサービス”、”◯◯町家事代行サービス”、”◯◯村家政婦派遣施設”……｣
一番最後の頁に書かれた文字。
疑念は抱えきれないほどに膨らむのに、手がかりは何一つとして見つからなかった。
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湯葉(プロフ) - 夜さん» ありがとうございます!!とても嬉しいです!! (2020年10月5日 6時) (
レス) id: cb66408181 (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 原作ではないお話も入っているのでいつもハラハラドキドキしながら読んでます！この先でもし、世界戦に主人公が選手として出場するなら味方として出ても、決勝戦で敵として立ちはだかってもどちらの展開でも面白そうですね！これからも応援してます！ (2020年10月4日 18時) (レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
湯葉(プロフ) - 常備薬さん» ありがとうございます!!これからも頑張ります！ (2020年9月27日 21時) (レス) id: cb66408181 (このIDを非表示/違反報告)
常備薬(プロフ) - ドキドキしながら読んでます！やっぱり面白いです！ (2020年9月25日 22時) (レス) id: 074c2be95c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湯葉 | 作成日時：2020年9月21日 12時
