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吐き捨てるでも、叫ぶでもなくただ淡々と放たれた言葉は豪炎寺を硬直させるのに十分だった。
ネクタイを締め、ジャケットを羽織りながら彼は続ける。
｢もし好きに生きられる自由があったとしても、僕はどうやって”好きに”生きたらいいのか分からない。｣
髪を手ぐしで梳き、鏡を覗いて軽く整える。
後ろで俯く豪炎寺の肩を軽く叩き、柔らかく微笑んだ。
｢でもそれは他人のせいじゃない。僕のせいだ。｣
修也が気にする必要なんてないんだよ、と告げる声は優しいのに温度を感じられない。
何か言ったとしても彼は微笑むだけで、きっとまともに取り合ってすらくれないんだろう。
それが優しさだと信じて。
豪炎寺のためになると信じて。
｢……兄さんは絵を描くの、好きか？｣
ぽつり、と口から零れ落ちる。
目を見開く彼を真っ直ぐ見つめ、豪炎寺は硬い声のまま続けた。
｢好きなら兄さんは”好きに”生きられてる。
＿＿でも、好きでもないのに続けてるなら｣
｢そこまでにしてもらおうか｣
ぱっと後ろを振り向く。
険しい無表情と見下すような眼差しに、一気に身体が冷えるのを感じた。
聞かれていた。
おそらく、最初から全て。
｢着替え終わったならさっさと来い。
今回は身内向けの”お披露目”なんだ。｣
｢え……？｣
お披露目。
つまり、彼が次期当主として正式に一族の中から選ばれたということ。
がしゃん、と鍵が閉められるような音がした。
｢……豪炎寺、賭けをしないか？｣
｢父さんッ!!｣
焦げ茶の瞳に豪炎寺が映る。
今初めてこの男は、豪炎寺修也のことを”豪炎寺の息子”ではなく、”豪炎寺”と呼んだ。
つまりそれは、己の一族の人間として初めて認識したということ。
男と豪炎寺の間に割り込み、男を睨む彼の胸倉を男は躊躇することなく掴んだ。
｢貴様に話してない。下がってろ｣
｢修也を巻き込んでも、父さんになんの利益もない!!｣
ドン、と鈍い音。
背中を丸め、床に倒れた彼を男はせせら笑う。
｢利益かどうか決めるのは私だ。｣
｢修也……ッ｣
ぜったいに、のるな。
絞り出すような声。
恐らく背中から落ちたのだろう。苦しげに呼吸をする様子にいてもたってもいられなくなり、駆け寄って彼の背中を摩る。
｢皇の器は吐いて捨てるほどいる。
もし貴様が賭けに勝ったら、そいつではなく別の後継を指名しよう。｣
もし負けた場合は。
｢豪炎寺夕香を皇本家の養子とし、今後一切の接触を禁ずる。｣
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湯葉(プロフ) - 夜さん» ありがとうございます!!とても嬉しいです!! (2020年10月5日 6時) (
レス) id: cb66408181 (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 原作ではないお話も入っているのでいつもハラハラドキドキしながら読んでます！この先でもし、世界戦に主人公が選手として出場するなら味方として出ても、決勝戦で敵として立ちはだかってもどちらの展開でも面白そうですね！これからも応援してます！ (2020年10月4日 18時) (レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
湯葉(プロフ) - 常備薬さん» ありがとうございます!!これからも頑張ります！ (2020年9月27日 21時) (レス) id: cb66408181 (このIDを非表示/違反報告)
常備薬(プロフ) - ドキドキしながら読んでます！やっぱり面白いです！ (2020年9月25日 22時) (レス) id: 074c2be95c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湯葉 | 作成日時：2020年9月21日 12時
