#��_13 ページ15
｢……もしもの話だけど。
もしも彼処でもし僕が逃げ切れてたら、あのまま修也たちとサッカーを続けてたと思う。｣
それくらい、君たちと過ごす時間は心地よかった。
それくらい、君たちは優しかった。
喪失の痛みを忘れてしまえた。
”仲間”が得られたような気がした。
”サッカー”に”ヒロ”を重ねなくて済んだ。
｢……一回失敗した程度で兄さんは諦めるのか。｣
｢”あそこ”で失敗したってことは、相当前から僕のやろうとしてることは気づかれてた。
……今また反抗しても、また先の先の手まで打たれて終わりだよ。｣
そんなことをしたって何にもならない、と諦めた様子を隠さずに微笑む彼。
エイリア学園が誕生した理由も、その先に待ち受けていた剣崎のことも知っていた賢い彼。
そんな彼が諦めざるを得ない、と言う彼の父親。
冷ややかな眼差しを思い出す。
あの眼差しは、
｢お前も大概予想を裏切らんな、豪炎寺のところの息子｣
ばん、と突如として扉を開けた彼の父親。
つまらなそうな、それこそ路傍に落ちる石ころでも見るような目で豪炎寺を睥睨する。
さっと豪炎寺を庇うように立ちはだかる彼に鼻を鳴らし、着替えて会場に来るように告げた。
｢え、僕も……？｣
｢当然だ。次期当主を正式に宣伝しないわけにはいかんだろう。｣
此奴を連れて貴様も来い、と豪炎寺を射抜く眼差し。
こくこくと慌てて頷けば表情も変えぬまま男は部屋を出て行った。
なんだ、あの空気。
周りを圧倒するようなあれは、なんなんだ。
隣で酷く疲れたように息を吐いた彼。
タイミングを見計らったように入ってきたメイドに渡された服を見て、再び長く息を吐き出す。
｢兄さん、｣
｢……サッカーやってても苦しいのに、此処にいるだけでも苦しいってどうすればいいんだろうね。｣
ぽつり、と零した言葉。
ようやく彼の本心が少しだけ、見えた気がした。
サッカーをするのが苦しい。
＿＿今は亡き親友を思い出してしまうから。
家にいるのが苦しい。
＿＿全てを見透かされ、監視されているから。
息を吸うのさえ苦しい。
＿＿何処にいても、何をしてても居心地が悪いから。
ごめんね、と謝った彼の顔は酷く優しい。
こうやって自分に向けるべき優しさすら、彼は他人のために消費してしまうのだろう。
｢俺、兄さんには好きなように生きて欲しい｣
｢……それが出来たら最初からそうしてるよ。｣
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湯葉(プロフ) - 夜さん» ありがとうございます!!とても嬉しいです!! (2020年10月5日 6時) (
レス) id: cb66408181 (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 原作ではないお話も入っているのでいつもハラハラドキドキしながら読んでます！この先でもし、世界戦に主人公が選手として出場するなら味方として出ても、決勝戦で敵として立ちはだかってもどちらの展開でも面白そうですね！これからも応援してます！ (2020年10月4日 18時) (レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
湯葉(プロフ) - 常備薬さん» ありがとうございます!!これからも頑張ります！ (2020年9月27日 21時) (レス) id: cb66408181 (このIDを非表示/違反報告)
常備薬(プロフ) - ドキドキしながら読んでます！やっぱり面白いです！ (2020年9月25日 22時) (レス) id: 074c2be95c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湯葉 | 作成日時：2020年9月21日 12時
