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｢人は弱い。
故に強大な力を望みます。
しかし人間は未だ、その力に相応しい”器”ではない。
＿＿人がこの力を”悪夢”と言わず、”恩恵”と呼ぶにはまだまだ途方もない時間がかかるでしょう。｣
それが貴方の答えですか、と問う剣崎。
穏やかな声とは対照的にギラギラと輝く目にぞわり、と背筋が粟立った。
それでも退かない。
否、退けない。
鬼道、佐久間、帝国の皆、修也。
そして円堂守。
初めてだった。
”ヒロ”のいないフィールドで彼処まで心が踊るのは。
円堂の守るゴールにシュートを決めたい、と思ってしまった。
”ヒロ”しかいなかった筈の世界。
気づかないうちに沢山のものが増えていた。
こんなに温かい気持ちになれるなんて知らなかった。
人は欲深い。
一方を掴むにはもう一方を捨てなくてはならないのに、人は両方とも掴もうとしてしまう。
だからこれは罰だ。
与えられて当然の罰だ。
仲間も”ヒロ”も捨てられなかった。
選べなかった。天秤に掛けられなかった。
せめてもの償い。
”純粋に楽しめるサッカー”を贈ろう。
｢たとえ、僕の命を犠牲にしてでも｣
あなたの目論見を止められるのなら。
困りましたね、と呟く剣崎。
その割に焦っている様子が一切ない。
ふと足音が聞こえた。
警察か、という思考はすぐにうち払われる。
まず此処にいる両者共に呼ぶ理由がない。
そして先程までいた鬼瓦もまだ避難中だ。
未だ倒壊の続いている場所に部下を向かわせる訳には行かないだろう。
｢……おやおや｣
にやり、と剣崎が口を裂くように笑みを浮かべる。
ハッと後ろを振り向いた彼。
なんで、
｢なんで、ここに……｣
｢くだらん質問をするな｣
時間稼ぎにすらならん、と険しい無表情で言い放ったその男は、紛れもなく彼の父親だった。
薄く灰色がかった黒髪、そして凡庸な焦げ茶の目。
それでも顔立ちは精悍に整っており、彼の血縁者であることは一目瞭然だった。
血の流れた白くか細い腕、血の滲んだユニフォームに男は顔を顰める。
｢言った筈だ。
”皇の器”に今後残る傷をつけることは許さん、と。｣
｢それは……ッ!!｣
あの日結んだ約束。
”ヒロ”を忘れたくなくて、その証をずっと取っておきたくて。
『球蹴りでもなんでもしていい。
＿＿だが、”皇の器”に痕の残る傷をつけることだけは許さん。
それさえ守れれば自由にしてていい』
忘れていた。
自らの父親の”皇の家”への執着を。
＿＿あの約束の本当の意味を。
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湯葉(プロフ) - 夜さん» ありがとうございます!!とても嬉しいです!! (2020年10月5日 6時) (
レス) id: cb66408181 (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 原作ではないお話も入っているのでいつもハラハラドキドキしながら読んでます！この先でもし、世界戦に主人公が選手として出場するなら味方として出ても、決勝戦で敵として立ちはだかってもどちらの展開でも面白そうですね！これからも応援してます！ (2020年10月4日 18時) (レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
湯葉(プロフ) - 常備薬さん» ありがとうございます!!これからも頑張ります！ (2020年9月27日 21時) (レス) id: cb66408181 (このIDを非表示/違反報告)
常備薬(プロフ) - ドキドキしながら読んでます！やっぱり面白いです！ (2020年9月25日 22時) (レス) id: 074c2be95c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湯葉 | 作成日時：2020年9月21日 12時
