イルミナント

J108 #5 ページ48

あれから、あのショッピングモールに行った日から、慧くんはまたひとりでご飯を食べるようになった。

はじめは体調を崩しているなんて言って部屋で食べていたけれど、最近はそんな言い訳すらしてくれない。
完全に、俺たちを遠ざけているようだった。


まるで、来たばかりの頃の慧くんのような。


涼介くんとの間に何かあったのは確実だろうが、俺らには慧くんを問い詰めることもできない。

せっかく、仲良くなってきたのに。
せっかく、自分を出してくれるようになってきたのに。


日に日に食べる量が少なくなって、日に日に痩せていく慧くんに何もできないまま。
その無力さにまた溜息を吐き出す。





その日も突然だった。

あの時と同じように、光がお盆を取りに行って、それから焦った光の声が聞こえて。
部屋に入ったらネコのお盆の上、綺麗に夕食は残ったままだった。


そして、



「慧くん！しっかりして！慧くん！！」



目を覚まさない慧くん。




何もかもがあの日と同じで、あの日から何も進んでいなくて、また彼を苦しめてしまったという罪悪感に吐き気がする。



目を開けないのに何かをずっと喋っている。
その姿に安心すらした。



意味のない言葉を発し続ける慧くんを横目にスマホの電話マークをタップする。


119を押す自分の指は、今まで見たことがないくらい震えていた。

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