イルミナント

J93 #5 ページ33

手の平サイズの小さなネコのぬいぐるみ。
高く見積もっても1500円ほどだろう。



「1個でいいの？」

「うん。」

「光るおもちゃとか、いいの？」

「…うん。」



今の間に少し心配は感じたけれど、本人がこれでいいと言うならこれでいいのかもしれない。



「ネコ、1人じゃ寂しいでしょ…？」



また胸がグッとなった。

俺は「そうだね」って笑うことしかできなかった。


あんなに1人を好んでいた慧くんが、自分のぬいぐるみを1人にさせないと言ったことが、衝撃的だった。




「この子でいいの？」

「この子がいいの。」




俺はその子を丁寧につかんで、レジに持っていった。




「ありがとう。」


慧くんに手渡せば嬉しそうに笑う。
よく、笑うようになった。


「好きなもの、見つけたよ。」


俺、ネコが好きって。



ネコか。ネコが好きなのか。



好きなものを見つけてくれたのが嬉しくて何度も反芻してしまう。




「じゃあ今日の目標は達成だね？」

「うん！」



来た時の不安そうな顔が嘘のように、太陽に向かう花のような笑顔でまた笑った。



J93 Fin.

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