J58 #1 ページ21
時々、思い出す。
殴られたこと。痛かったこと。死にたいくらい辛かったこと。
一瞬、電気が消えただけ。
いつもと違って、突然電気が消えただけでも蘇ってしまう記憶。
嫌になる。
何も見えない、何も聞こえないけれども、身体中を恐怖が支配している。
その恐怖は体を震わせて、口から言葉を零す。
「こわいっ……」
その声に機敏に反応した宏ちゃんが近寄ってくるのが見える。
見えているのに、なんでこの恐怖はなかなか引いてくれないのか。
「こわいっ……こう…ちゃんっ……」
「大丈夫だよ、光。ゆっくりゆっくり。」
「ゆっくり」と言われたところで初めて、自分の呼吸が乱れ始めていることに気づく。
自分ではゆっくりと呼吸をしているつもりなのに、肺は言うことを聞いてくれない。
「こっ…ちゃ………」
「何も怖くないよ、大丈夫。ギュッてする?」
何かに掴まらないとこの恐怖を逃せない気がして、大きく首を縦に振った。
次の瞬間、大きな体が近づいてきて、椅子に座ったまま反射的に抱き着いた。
「そのままギュッてしてなね。怖くなくなるまでずっとギュッてしてていいからね。」
「こうちゃっ……こわいっ………」
その場はもう明るいのに、怖い。
怖い。
怖い………。
なんで怖いのかすら分からないのが一番怖い。
目の前の宏ちゃんからなかなか離れられそうになかった。
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青空と虹(プロフ) - わざわざ言っていただいたのにすみません……これからもよろしくお願いします! (2021年2月2日 2時) (レス) id: 4cc456b6d8 (このIDを非表示/違反報告)
ぷく顔信者(プロフ) - 青空と虹さん» いえいえ!了解しました、これからも応援しています! (2021年2月1日 21時) (レス) id: 802ab26e17 (このIDを非表示/違反報告)
青空と虹(プロフ) - ぷく顔信者さん» はじめまして!コメントありがとうございます。今のところ自分の作品はイニシャルを入れずに伝えたいな、と思っており、入れずに進める方針です。読みづらくなってしまい申し訳ないのですが、誰が話しているのか考察して欲しいな、という作者の我儘です。ごめんなさい! (2021年2月1日 20時) (レス) id: 4cc456b6d8 (このIDを非表示/違反報告)
ぷく顔信者(プロフ) - 初めまして!まだ数話しか更新されていませんが、楽しく読ませてもらっています(´˘`*) 差し出がましいのですが、鍵かっこの初めに誰が話しているかわかるようにイニシャルなど入れていただくことは可能でしょうか…? (2021年2月1日 19時) (レス) id: 802ab26e17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:青空と虹 | 作成日時:2021年2月1日 0時