Memory

ソウサ #6 ページ21

あのあとソファに座った有岡くんはちびちびとグラスの水を飲んだ。


高木くんはそんな有岡くんの背中をゆっくりとさする。





俺はと言うと、そんな2人を見つめて突っ立っている。





「落ち着いた？」





高木くんの声はやけに落ち着く。



言われたのは有岡くんだけど、彼の声のおかげで俺もなんとなく頭を整理できた。






「ん……大丈夫。」





まだ少し上がった息で有岡くんは小さく返事する。






「続き、教えて。」






そう言って俺をちらりと見る。


少し上目遣いになる彼の目は潤んでいる。





「さっき言った通り、俺は小さい時の記憶がなんもない。でも、伊野尾ちゃんに有岡くんのこと、有岡くんのママのこと聞いたら、知ってるけど答えられないって言われた。」




「じゃあ…。」




「うん、多分俺も有岡くんのママのことに関係してる。」




「うん……。」




「有岡くんのママは、事故なんだよね？新聞で見た。」




「新聞には事故って書いてあった。俺も見た。でもお父さんは殺されたって…。」



「そっか、そうだよね。」



「階段から落ちたの、ママ。押したのがっ、その……」



「俺ってわけだ。」





もし本当に俺が押してたなら、宏太と伊野尾ちゃんが何か隠してるのも、有岡くんのパパの言うことも全て合点がいく。








だとしたら、なんで俺は人を押したんだ？

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