神父と吸血鬼の譚 ページ4
「__ッ、近付くな!」
パン、と差し出された手を振り払った音が辺りに響いた。
地面にしゃがみ込んだ俺を見下ろすピジョンブラッドの色が、冷たく光る。
「ハァ?
せっかく助けてやろうとしてんのによ」
「煩いッ、……人外は澱を吐き出すだけの存在だろ!
触られるだけで、吐き気がする……ッ!」
そう吐き捨てれば、目の前の存在は眉間に皺を寄せた。
「澱ィ……?
ンだそれ。まぁ、もういいや。どうせ血濡れだし、見つけたら手遅れだったって叶には言っときゃいいだろ」
「ダメだよ葛葉。僕ちゃんと拾って来てって頼んだよね?」
「げ、叶!?」
視界が歪み、黒く塗りつぶされていく中で。
新しい声と、先程までとは違い、柔らかな声で慌てる人外の声だけが耳に残った。
*
「あ、気付いた?」
戻った意識が最初に認識したのはどこかで聞いた声。
ボーッと声が聞こえた方向へ視線を向けたと同時に、それがブラックアウトするまでに聞いた声だと思い出す。
「僕は叶。
此処は教会ね。色んな方々が訪れる町外れの教会」
低すぎることなく、耳に溶け入るかのような声が告げた内容を理解するのにしばし時間がかかっていると、別の……トゲのある声が聞こえた。
「おい、だんまりかよ」
「葛葉」
「コイツ、ぶっ倒れる前は大声で叫んでたんだぞ。
助けてもらったくせに何も言わねぇとかさ」
さっき見た白髪が壁に寄りかかるようにして立っていた。
ただ、そんなことよりも俺は人間と人外が普通に話していることが不思議で仕方なかった。
人外は、澱を作り出す……人に忌み嫌われる存在じゃないの?
今までの世界では、人外と出会うことは無かったから分からない。
俺の認識が間違っているの?俺の一族の教えが歪んでいるの?
「__ねぇ、人外って、嫌われる存在なんじゃないの」
「え、人によると思うけど。
まぁ、親しくしてるのは僕だけだけど。
そう明るく笑う彼の顔は本心からのものだと分かった。
本心から、その存在と共にいるのだと。
ちらりと後ろにいる白髪に視線を投げかければ、不機嫌そうにしながらも答えてくれた。
「人から嫌われてんのは、否定できねぇけど。
この世界、宗教だのなんだので雁字搦めだかんな。
ただ、互いに納得してそばに居るやつだっている。
……お前だって人間からしたら俺と同じ人外だろーが。今まで優しいやつに会ったことねぇのかよ」
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りく(プロフ) - 日向さん» 楽しみにしております! (2022年1月18日 4時) (レス) id: 4c715eefda (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - りくさん» 頑張りますね!!取り敢えずは本編に繋がるまでのwtrの回復するまでのお話を書けたらなと! (2022年1月17日 23時) (レス) id: 0ceab624dc (このIDを非表示/違反報告)
りく(プロフ) - 日向さん» 素晴らしいですよね!!!((マッテマス) (2022年1月17日 22時) (レス) id: 4c715eefda (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - りくさん» 本編は幸せメインですが、こちらは完全に闇に染めてしまうのも手ですかねぇ??笑 ……闇落ちって素敵ですよね← (2022年1月17日 22時) (レス) id: 0ceab624dc (このIDを非表示/違反報告)
りく(プロフ) - 日向さん» 幸せなwtrをずっと見ていたい!!!でもっ!!!!独りで苦しんでどうにも出来ないwtrもみたいッ! (2022年1月17日 19時) (レス) id: 4c715eefda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:日向 | 作成日時:2021年10月23日 14時