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傷に触れた譚 ページ19

「待てって」


パシ、と逃げようとしていたAの腕を掴んだことで乾いた音が響いた。

ピクリと肩が揺れ、彼の腕は俺を振り解こうとするものの……その力は、酷く心許なかった。
あの日までの輝かんばかりに笑顔を零して、力強く隣に立っていたAは何処にもいない。


「離して、くれませんか」

「ンな下手くそな敬語なんかいんねーよ。
それよりも、いい加減逃げんの辞めろ」

「……逃げてなんか、」


小さな声はそこで途切れた。

そうだよな。
自分も気付いてんだろ?お前は分かってて嘘をつく事は苦手だったもんな。そりゃ、言葉も詰まるか。


本社ですれ違うAの話題がライバー間で流れても、周囲は『そういう人なんだ』と受け入れ、誰もAに踏み込まない。
……でも、俺だけは逃がしてやんねぇかんな。

あの頃のお前を知ってる。笑ったお前を知ってる。

そんな当たり前で尊い過去を取り返してみせる。


だからその為に何度だってお前の前に立ち塞がって、退路を潰す。


「A」


なぁ、そろそろ諦めた方がいいって気付いたんじゃねぇの。


「この後、コラボすんぞ」


枠はもうとってあっから、と告げられたAの表情は怯えのような、緊張のような。
けれど、その中に僅かに見えた希望の色は……見間違いなんかじゃねぇって信じても良いんだよな。











「っし、今日はゲストいるから」


その一言で画面の中の文字が一気に増える。

そして同時に、俺の逃げ道が消えた。ゲストという言葉さえなければ、スタジオに連れ込まれたとて部屋から逃げても『スタッフが出ていった』とでも思って貰えたかもしれないのに。

そんな俺の思考を察していたのか、葛葉は配信が始まっていの一番にゲスト(俺の存在)をリスナーに告げた。


そうして今度は、ぐっと胸の当たりが重くなった気がした。

……俺の配信は、ゆったりと話すか作業をしているかのどちらかで葛葉のようにゲームなんてしていない。

配信の内容が違えば、勿論集まるリスナーたちも異なる。

"葛葉"を求めて来ている人達に、おれ(異物)の存在は邪魔に思われかねない。


「……先に言っとくけど、そのゲストってのは俺にとって大切なヤツだから」


いくら俺を応援してくれてるからって、ソイツを傷つけるような事を言うようなファンは要らねぇとズパッと告げてしまう葛葉に目を丸くしてしまった。

そして改めて実感した。

葛葉は俺を覚えていてくれたんだと。

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りく(プロフ) - 日向さん» 楽しみにしております! (2022年1月18日 4時) (レス) id: 4c715eefda (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - りくさん» 頑張りますね!!取り敢えずは本編に繋がるまでのwtrの回復するまでのお話を書けたらなと! (2022年1月17日 23時) (レス) id: 0ceab624dc (このIDを非表示/違反報告)
りく(プロフ) - 日向さん» 素晴らしいですよね!!!((マッテマス) (2022年1月17日 22時) (レス) id: 4c715eefda (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - りくさん» 本編は幸せメインですが、こちらは完全に闇に染めてしまうのも手ですかねぇ??笑 ……闇落ちって素敵ですよね← (2022年1月17日 22時) (レス) id: 0ceab624dc (このIDを非表示/違反報告)
りく(プロフ) - 日向さん» 幸せなwtrをずっと見ていたい!!!でもっ!!!!独りで苦しんでどうにも出来ないwtrもみたいッ! (2022年1月17日 19時) (レス) id: 4c715eefda (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:日向 | 作成日時:2021年10月23日 14時

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