替えの服 ページ11
「いただきまーす」
と声を合わせて言ったものの、彼女はスプーンを握らない。
どうしてなのか気になっていると、彼女は「先に食べてみて」と言った。
作った本人より先に、そして本人の前で食べるというのは結構緊張するものだ。
「じゃ、じゃあ…」
彼女の顔を伺いながら、オムライスをゆっくりと口に運んだ。
口に入れた時、緊張というのは一気に吹き飛んだ。
「うまっ!」
手で口の中を見えないようにして言う。
そうすると、彼女は「ありがとう」と返してきた。
「Aも早く食べて!マジでうまい」
まるで俺が作ったような発言をしてしまったが、早く食べないで冷めるよりは良いと思う。
「本当だ。美味しい」
最近作らないから、と彼女は付け足す。
(料理って作らないと鈍るもんじゃないの?)
俺には、女の人を部屋に呼ぶ事なんてさらさら無いから、何が正しいのか分かるわけがなかった。
そこからはぎこち無い会話をしながら、彼女のご飯を食べた。
(これ…夢じゃないよな…)
事が上手く行き過ぎて、少々不安になった。
・
「ごちそうさまでした」と声を揃える。
“いただきます”と“ごちそうさまでした”なんていつぶりに言っただろう。
「お風呂借りるね」
そういえば、彼女はまだ風呂に入ってない。
風呂を貸す事には全然構わないが、ひとつ疑問があった。
「その…替えの服とかあるの…?」
「あ」
今、彼女が来ている服はとても寝巻きには使えそうにない。
翌朝にシワシワになっている事だろう。
彼女の様子を見るからに、替えの服は持ってないようだ。
まあ、それが普通だろう。
恐る恐る口を開く。
「嫌じゃなかったらだけど…」
ここまで言うと、もう後戻りは出来ない。
「俺の服、着る?」
俺の人生は終わったかもしれない。
付き合いたての彼女に彼シャツ…?
いや、シャツでは無いか。
どっちにしろ、自分で考えるだけでも有り得ない。
きっと引かれた。
シーンと静まり、彼女の顔は笑顔では無くなった。
空気が重くなる。
『さっきのは冗談だから』
そう言おうとした瞬間、俺より先に彼女が口を開く。
「いい…の…?借りても…」
マジか。
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ツナおにぎり - はじめまして!やゆりさんの小説読ませていただきました!なんだか理想的な展開で、現時点の最後のところがすごい、なんか、めっっっっちゃいい!wすごい読んでいて楽しい小説でした!ありがとうございます^^ (2021年8月9日 17時) (レス) id: 2f5c5f7cda (このIDを非表示/違反報告)
_ましゅ.*。 - やゆりさん» 返信めっっっちゃ遅れて申し訳ないです!!やゆり様ぁぁぁぁお久しぶりです!!!おかえりなさいですッッッ!!改めて10000hitおめでとござまーす!私の小説もこの前1ヶ月放置しましたから大丈夫ですよ!wずっと応援してますのでやゆりさんのペースで頑張って下さい! (2020年12月13日 18時) (レス) id: 5bea49790c (このIDを非表示/違反報告)
やゆり(プロフ) - ▼あまね△さん» あまねさんお久しぶりです!!これからまたよろしくお願いしますー(*' ')*, ,)ペコリ (2020年10月30日 23時) (レス) id: db085b8aee (このIDを非表示/違反報告)
▼あまね△(プロフ) - おかえりなさい!!!!!!やゆりさまぁぁぁぁぁぁ (2020年10月30日 21時) (レス) id: 5e8d51ce7d (このIDを非表示/違反報告)
やゆり(プロフ) - しらはさん» ※このアカウントは私のアカウントで間違いないです (2020年10月30日 1時) (レス) id: db085b8aee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:やゆり | 作成日時:2020年3月25日 18時