空色に憧れて。【そらびび】

新人ボカロP ページ32

駅の階段を駆け下りて、少し歩いたところの開放感のあるカフェに向かう。


今回は、『色星(しきせい)インコ』という、新人ボカロPさんとの約束だった。

連絡してみると彼はまだ着いていないらしく、私は珈琲を注文する。


珈琲が好きな訳でもないが、目を覚ますため。

紅茶でも良かったが、私的には珈琲の方が目が覚める。


そうして約2分後、彼は息を切らして此方に向かってきた。

「ハァ…ハァ…お、遅れてすみません。僕からの依頼なのに。」

「いえいえ、此方も今さっき来たところなので。」


一件、人から見ればデートのような会話だが、これはただの仕事。

彼と友達にだってなりたいけど、それも仕事の延長みたいなもので。

(そらびびさんからの私も、そんな風に見えるのかな。)

ふと、そう思うと悲しくなる。


「依頼のイラストなのですが、こんな感じでよろしかったでしょうか？」

「そうです！それです！それにしても、絵上手すぎませんか？」

「いえいえ、まだ新人なので。」

まあ？イラストレーターですから？

と調子に乗りたいが、それは自分のハードルを上げるだけであって。

言いたくはない。


彼と私は仕事は違うが、ほぼ同じ時期にそれぞれの仕事を始めたそうで、DMは盛り上がった。

彼の曲はよく見ていて、完成度は高かった。

なのに再生数は一万、二万止まり。


それでも新人では高い方だと思うけど、どうも納得がいかなかった。


「色星さんの曲も聞かせて貰えませんか？」

「是非是非！」

(結構自信あるっぽい。)


彼は机に置いていたパソコンを開き、私に向ける。

そこにイヤホンを刺し、目を閉じて曲を聞く。

(凄い…。)

ポップなボカロ曲で、今までの彼の曲で一番良かったかもしれない。


「どうですか！？」

「凄くいいと思いますよ！歌詞にもV○CALOIDの使い方にもこだわっていて。ポップなのに臨場感があって。」

そこまで言うと何故か彼は目に涙を貯めた。


「ありがとうございます…！！」

私の感想がそんなに嬉しかったのか。

(ありのままを言っただけなのに。)


私は液タブを出し、イラストに修正を入れる。

「この曲なら、もっと明るい方がいいですよね！」

「そうですね！…初めてみたなぁ、“推し”イラストレーターさんの作業なんて。」

“推し”と言う言葉が聞こえて胸が踊る。

人前で、すんなりとそんな事も話せる彼は尊敬する。

また駅へ→←呆然とした朝

ラッキーアイテム

革ベルト

ラッキーカラー

あずきいろ

おみくじ

おみくじ結果は「末凶」でした！

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す