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「いらない。そんな暇ないから」
不意にAと男のスマホが鳴る。
2人とも出る。
男は相槌を打って時折鼻で笑う仕草をする。
Aは黙って聞いているだけ相槌は打たない。
しかし、段々と顔色が悪くなる。
そして大したことないと笑う男を睨みつけた。
立とうとする姿勢を見せると男は逃げようとする。
しかし、足払いで見事に転ぶ。
「ねぇ、人間ってラットじゃないって知ってる?」
大して大きな声ではないのにも関わらず低いその声は響く。
「お前……なんて言ったらダメか。君達、明日から職場に居場所はないと思えよ。家族に頭下げることだね」
横で立っている医者の男も睨みつけ、足元の男を見る。
「残念だよ。小さい頃は一応、君にも憧れを抱いていたけれど行きついた先がこれか」
失望したと吐き捨てる。
「一体、何が起きたというのだね」
「この男が発表した薬、ただの劇薬だったって話。ちゃんと事前に実験をしたら出てくるはずだったのに。治験にいきなり出して何人も昏睡に落ちたって」
医者の男は恐る恐る足元の男を見る。
「実験はした!絶対だ!」
「してないだろ」
その声に全員が顔をあげる。
聡介の姿があった。
「うちの研究チームがラットで実験してくれているがいい結果は出ないみたいだ」
「そんなの、お前の研究チームの腕が悪いからだろう!!」
「ほぉ?俺が持っている研究チームを知らんとは。悲しいなぁ?A」
「そうだね。君もいた場所なのに」
その言葉に男は目を見開く。
「待て、二人が捕まった時点で取り潰しになったんじゃ」
信じられないと首を振る。
「なったさ。なったから俺が会社を立ち上げてかき集めた。ついでに若手も増やしてな。そしたら国内どころか世界で良い線行くチームが出来上がっちゃって忙しい事この上ない」
と笑って説明するが一拍を置いて次に男を見る目はとても冷たかった。
「そいつらが総動員で出した結果が信じられないって?薬に関してはAと肩を並べられる天才と変態共だぞ?」
何も言えないのを見て聡介はAを俵担ぎした。
Aは凄く嫌な顔をしたが抵抗しない。
「天才と変態二人借りるぞ。由井、酒が抜けたらお前も来い。それと服部君。君はもう少し深入りして決めろ。完全にスタンドからコイツを完全に切り離すか、入れるか。お前もお前だ。入らないといったなら未練タラタラと片足突っ込むな。んなの常人でも壊れるに決まってるだろ」
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作者名:弥生 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=hakuoukiyayoi http://
作成日時:2022年4月22日 0時