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泉は何かを聞こうとしたが会話がトントンと進んでいくからすっかりそのことが抜け落ちた。

それどころか気付けば呂律が回らなくなっている。

「あれぇ……?」

なにかを言おうとしても言葉が出てこない。

まぁ帰るときに声をかけてもらえるだろうと泉は意識を手放した。

泉の前に割けと食べた後があるがAの前は食べた痕跡がないどころかお猪口の酒が少ししか減っていなかった。

「A、この店にいたね?」

「おや、耀さん達は仕事が終わった打ち上げじゃないの」

どこか余裕のある笑みを服部に向ける。

「いんや、こっちが本命さ」

あぁ、とAはぐるりと見回す。

それなりに皆が酒を飲んでいる。

だけど、誰一人酔っていない。

服部班とマトリとLevel。

「嫌だな、確認に来ただけなのに。それに君達の出番はないだろう。終わった話だ」

声の温度が段々と下がっていた。

最後の方だけ無機質だった。

「15年前のご両親の事か」

桧山が口を開けばAは溜息を吐く。

「秀介さんですか」

「聡介さんとみのりさんもだよ」

「もう誰だっていいよ。何を確認したかったのか知りたいなら黙っていればいい」

隣の部屋に通じる襖に目を向ける。

そこから大きな笑い声が響く。

「宴会か?」

「何が聞こえても黙ってなよ」

幾つか質問を受けるが「黙って」の一言しか帰ってこない。

それでようやく静かになったころ、向こうも静かになった。

落ち着いてはいるが酒が入っているから声が大きい。

「あれから15年か」

「いやぁ、先生には感謝してもしきれませんよ。私の研究論文も今の地位も先生のおかげです」

「なに。薬の飲み合わせの悪さから来るアナフィラキシーを事故に見せかけるなんて誰でもできる。犯罪者なら尚更詳しくは調べないだろう」

と鼻で笑う声が聞こえる。

「しかし、花田の男の方も女の方も良く投与できましたね」

「精神錯乱だといって鎮静剤打ったついでにな。二人とも最後まで「娘が気付けば地獄を見るぞ」と言っていたが結局15年知らずに生きているときた。知ったところで犯罪者の娘に何かできるわけがない」

馬鹿にするような笑い声が響く。

「天才だと持て囃した割には大したことがなかったですね。あの小娘の書いた論文だって俺が書いたといって先生がそうだといえば皆がそうだというんですから。おかげで地位も金もたんまりですよ」

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作者名:弥生 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=hakuoukiyayoi http://  
作成日時:2022年4月22日 0時

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