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「相変わらずパッと来てサッといなくなっちゃうから寂しいですね」
「とはいえ、余計な口出しをされても困りますからね。彼女はそこを弁えているのでしょう」
菅野の軽口を朝霧がバッサリと切った。
不意に泉は口を開く。
「あの、飯島さんは一人で大丈夫なのでしょうか?あの様子だったら女性の相手の方……男性を捕まえに行くんですよね」
見た目はふわふわとしていて決して体格が良い方に入るわけじゃない。
第一女性である以上男に力で勝てるとは思えない。
「あいつなら大丈夫だ。少なくとも合気道は達人ものだし、柔道も有段者だ」
「実際俺達もAさんから一本取るの至難の業だからねぇ。あ、今度耀さんと10本勝負なんてどうです?」
意外に興味を持ったらしい朝霧と荒木田の視線が服部に集まる。
服部はなにか考えるように頭を掻いた。
「んー……Aが良いって言うならやろうかねぇ」
「お母さん理論ですか。そう来ると思ってこの間飲み会の時に頼みましたよ〜。そしたら『耀さんが良いって言ったら』って」
「明らかに本気にされてないだろ……」
「でもなんやかんややってくれますよ。Aさんなら。なんなら一本取ってくれそうな気もします」
ね、と同意を求めるように荒木田や朝霧の方を見ると二人とも少し考える素振りをした。
ありえなくない話なのだろう。
「そうと決まったら頼まれたことちゃちゃっとやって明日の報告書にいい知らせが来るようにお手伝いしなきゃですね。じゃ、戻りますねー」
と菅野は自分の車に乗って行ってしまった。
「課長くん。君達も万全に支度をするといいよ。あの子は線引きが上手だから明日はドンと仕事が増えるだろうから」
そう言い残して残りの3人も戻って行ってしまう。
残されたマトリは何を言っているのか理解したのは次の日、報告書が上がってからだった。
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作者名:弥生 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=hakuoukiyayoi http://
作成日時:2022年4月22日 0時