【まほやく】御伽噺のような (ページ4)

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シャイロック「しかし、驚きましたよ。貴方が南の国の魔法使いになっただなんて」

ムル「何も不思議な事じゃないよ。未知の生物を求めるためには人の手が入っていない南の国は天国さ」

A「未知の生物を求めていたわけじゃないんだけどね。開拓中は家畜とか犬とかに病気が流行りやすいからね。あれって、ただ直すだけじゃ意味ないから抗体を生み出したりその元を消したりするんだけど、それに素材沢山使うでしょ？つまりは家のたまりにたまった素材を使えるということさ」

シャイロックは盛大に溜息を吐いた。

シャイロック「また家の床が抜けたのですか？」

A「一階と二階が見事に吹き抜けたよ」

と遠い目をしていう。

ムル「素材の宝庫のはずなのにゴミ屋敷だよね」

シャイロックがカクテルを一つ出すとAは一口飲んで美味しいと笑う。

A「使いたい素材があったらいくらでも言ってね？多少難しいのまでならいくらでもあるから」

そう言いながらクロエの手に糸を持たせる。

クロエ「え、えぇ？！」

A「これは幻視蝶の蛹から作った糸だよ。成虫は鱗粉で幻覚を見せてくるんだけど、蛹の糸はとても綺麗な光沢を出すのさ。魔力を込めてあげたらさらに綺麗なものになる無害な糸だよ」

ほら、と髪を結っていたリボンを解いて見せた。

それはシルクのような光沢の上に宝石がちりばめられたかのように様々な色の小さな光の粒が織り込まれていた。

クロエ「え、すっごく綺麗……俺に、作れますか？」

A「練習してみたらいい。お手本にこれあげようね」

とそのままリボンをクロエの手の中に収める。

驚くクロエをよそに新しいリボンを出して魔法で結い上げる。

A「どうしたんだい？賢者様。そんなに見つめられるとさすがの私も穴が開いてしまうね」

賢者「いえ。元の世界にもメメント・モリっていう言葉があったなって」

A「ふむ。賢者様の世界ではいろんな言葉があるんだね。ちなみに意味はどんなのかな？」

賢者「『死を忘れるな』だったような……」

それを聞いてAはうなずいた。

ムルも面白そうだという顔をした。

A「私の呪文もまさにそれだとも。賢者様。私たち魔法使いと君たち人間、生物全般それぞれ寿命がある。つまり時間の感覚がバラバラなわけだ。だけど一つだけ同じ部分がある」