番外編 其の四 ページ32
蒼海は、さて屋敷に帰ろうかと、小路を歩いていた。
すると、気づいてはいたものの、ばったりと知った顔に出くわした。
相手は、見るからに嫌そうな顔をする。
『久しぶり、薫』
蒼海が名前を呼ぶと、相手の女子が険悪な雰囲気で返す。
「...こんなところで、一体何をしていらっしゃるんですか?」
口調こそ取り繕っているものの、本性が隠しきれていない。
しかしそれには気づかない振りをして、蒼海は言った。
『ねぇ、折角だし買い物に付き合ってよ。どうせ土佐の仕事じゃなくて、“彼女”目当てでしょ?』
すると暫し黙っていた薫は、微かなため息とともに歩き出す。
「......来たければ来ればいいだろ」
その声は、それにしてはやや高めの、だが男の声。
『じゃあこっち、おいで。《escort》してあげるから』
「...日本語で喋れよ」
『男性が女性を丁寧に護衛すること。英国紳士の義務、ってやつだね』
「......なら、お願いしますね」
女声に戻して、薫は言う。
そして二人は、連れ立って歩き始めた。
『じゃあ僕、ここで団子を買ってくるから。そこで待っててね』
「ええ」
蒼海は一人で甘味処に入り、団子を注文する。
すると、外での言い合いが聞こえてきた。
「やめてください! 放して!」
どうやら、薫と浪士が言い合っているらしい。
「外でなにかあったみたいですなぁ。お客さん、暫く待ってるかい?」
それが聞こえたのか、店員が蒼海に声を掛けた。
『ううん、大丈夫だよ。あれ、僕の連れだからさ』
そう言って、蒼海は店を出る。
そこに居たのは、薫と浪士、それから新選組だった。
沖田総司と、それから藤堂平助。
新選組だと主張する浅葱の羽織を見て、引け腰の浪士達に、蒼海が背後から追い討ちをかけた。
『ほらほら、それは僕の連れなんだから。欲しいなら僕を殺してからにしなよ?』
すると、挟み撃ちにされた事で明確な不利を悟ったのか、浪士達は捨て台詞を吐いて行ってしまった。
『Phew...』
ぽつり
蒼海が呟く。
一瞬場に沈黙がおりたが、すぐに沖田が話し出す。(因みに、英語で『やれやれ』という感じの意味です!)
「ねえ君、異人か知らないけど、連れならちゃんと面倒見ててよね」
『あぁ、うん。ありがとね』
「見覚えのある顔だけど、まあいいよ。僕達も時間があるわけじゃないし。...にしてもそっちの子、この子にそっくりだね」
「えっ?」
指さされたのは、千鶴だった。
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藤堂平助
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作者名:柚子雨 | 作成日時:2018年6月17日 10時