１４Ｄonghae ページ14
すれ違う人々がみんな止まったかのように、俺はただ君を見つめてた。
向こうから歩いてくるA。
あと五歩•••三歩•••
10年前と変わらない、強い眼差しを持った君が俺の横を通り過ぎた。
俺は無意識にAの手首を掴んでいた。
振り向く君。
「A•••？」
もしまったく違う人だったら？
そんなこと一切思わなかった。
目を大きく見開いた君。
そして小さく呟いたんだ。
「ドンへ•••？」
あの日、終わったはずの恋が今日また始まろうとしている。
信号が点滅し始めた。
「こっち！！！」
俺は君の手を引き、急いで信号を渡った。
信号を渡りきりAの方をみると、少し息を切らしながら俺を見つめていた。
「ドンへ•••本当にドンへなの？」
「久しぶりだね、A！」
「私のこと覚えてたのね。嬉しい。もう二度と会えないと思ってた。」
そう言って笑った君の笑顔は10年前と同じだった。
「日本にいたんじゃないの？いつソウルに？」
「先週もどったの。会社の本部がソウルに移ったから、私もソウルに異動になったのよ。」
少し大人っぽくなったな。
また、綺麗になったな。
そんなことを考えていると、
「あ、私ミーティングがあるんだった。ごめん！行くね。」
焦りながら君がそうやって言うから、俺は思わず言ってしまったんだ。
「今日、夜7時から空いてる？ご飯一緒に食べない？」
時が止まったかのにような間ができた。
Aは僕をじっと見つめたまま言葉を発さない。
10秒、いや、それ以上だろうか。
君がゆっくりと口を開いた。
「明洞で待ってる。」
彼女はそう言って、オフィス街へと向かっていった。
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作者名：やよい | 作成日時：2015年4月10日 0時
