《魔入間》参りましょうMyGirl！4

156:少女、盗聴 ページ33

本校舎から問題児クラスの教室に行く途中、中庭の方に人溜まりができているのが目に止まる。近づくと生徒の群れのなかに見知った教員を見つけた。

「ダリ先生。なんの騒ぎです？」
「おっ、カルエゴ先生！見てくださいよ〜」

その指の差す先を見て、ぴくりと眉頭が動いた。

『ーー…』

小さく寝息を立てる恋人の姿。それだけなら良かった(いや、他人に見られてること自体腹は立つが)。
1番の問題は、

「入間軍寝てる！」「ぐでぐでだ〜」「かわいい〜！」「いいなぁ膝魔クラ」「ふにゃふにゃだあ！」「おっ推し達が今日も尊いぃｯ…！」

後ろで囁かれる度に血圧が上がるのがわかった。
木の幹に背を預け、あろうことかアスモデウスと凭れ掛かり合い。膝の上に入間とウァラクの頭を乗せたその光景。

「こんの…ｯ

――起きんかアホどもォ！！」

自分の怒号にすら起きないAに狙いを定め、無理やりそこから引っこ抜いた。

……翌朝。”入間軍お昼寝写真”が大きく載った校内新聞を、舌打ちをしながら乱暴に剥がしていくナベリウス・カルエゴの姿が目撃されたのは――…また別の話である。

▷▶︎▷

『ゔぅ…また怒られた…』

肩を落とし項垂れながら職員室から教室までを歩く。歩くというより、ずるずると力なく移動する。

4人で沢山はしゃいだ後、そのまま皆で寝てしまい何故か私だけ職員室に連行された。そしてカルエゴ先生のお説教タイム。30分で済んだのは良い方かもしれない。

『(確かに2年生になる自覚は、まだあんまりだけど…っ)』

お説教を受けている私の視界をにこやかな表情で通り過ぎていくマーチ先生と、擁護してくれようとして更にカルエゴ先生の火に油を注いでしまったロビン先生。
カルエゴ先生が大きく吐いた溜め息を思い出して、頭の中がピリピリと痛んだ。

『っ、…くしゅｯ』

カーディガンの裾を伸ばす。首筋を守るように髪を梳いた。暖かかったとはいえ、流石にこの時期に外でお昼寝は失敗だったかもしれない。

『(クララ達は大丈夫かな…はやく、戻ろう)』


「―――――えぇっ！

モモノキ先生の教育係ってカルエゴ先生だったんですか？！」

びたり。接着剤を踏んでしまったように床に張り付く両足。曲がり角の向こう側からモモノキ先生と数人の女の子達の声。

『…、』

なんだかとても悪いことをしている気分だった。それでもその話題にある名前が足を、耳を掴まえて離してくれず、

『…！』

声が近づく。

それを見た瞬間、体の奥を鈍痛が襲った。

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