Recipe:12-5 ページ45
『…しまった』
どこから来たんだっけ、と誰もいない廊下で狼狽える。会場広すぎない？いや、そもそも上の空で皆とはぐれた私が悪いのだけれど。
『あああもう始まってる…！そうだ、MAP！会場案内図は？！』
自分がどこにいるかさえも分からない。駄目だ、ポンコツにも程がある
『ナツさんに怒られるｯ…デコピン喰らわされる…！』
焦りと情けなさと恐怖で若干涙が出てきた。小走りで会場を探して、エスカレーターを降りたり昇ったり。人に会えば訊けるのに、誰一人としてすれ違わない。
…当たり前か。こんな重要な時に会場内で迷子になってるのなんて私くらいだ。あ、やばい、本格的に泣きそう。
彷徨っていると、遠くから拍手と歓声が漏れて聞こえてきた
『！』
絶対あそこだ！と思いつつ。勢いよく開けて違ったらそれはもうとんでもなく恥ずかしいので、扉に耳を当て確認する
「……」
微かに聞こえるリンダさんの声。
『ま、待って…！』
重たい扉を開いた瞬間
「Grand Maison Tokyo.Tokyo、JAPAN！」
『ｯ―――！！』
スクリーンに映し出され、高らかに呼ばれた名前。順位は
『…10位…』
―――超えられなかった。
偶然にも、開けた扉の目の前に皆が座っていて。手を取り合い、抱きあって喜ぶ皆。…カメちゃんと、ナツさんと京さん以外は。
この場で、世界中のシェフが目指すこの中で。順位を素直に喜べないなんて、なんて罰当たりなんだろう。
カメちゃん、ごめんね。ごめん。何も出来なくてごめんね。
泣くわけにもいかない。今1番辛いのは、カメちゃんで。今1番、自分を責めているのはナツさんだ。拳を強く握って、必死に堪えた。視界の端で、祥ちゃんやごまちゃんがこちらを見ているのがわかる。
…周りの音が遠ざかる感覚のなか、gakuの名が聞こえた。厳しい顔つきのナツさんが静かに私の横を通って、会場から出ていった
―――……
「またね、A」
『無理しないでね、エリー』
「Aちゃん、元気でね。お手紙いっぱい書くね」
『うん…元気でね。いっぱい食べて大きくなってね…！』
「A、それ田舎のおばあちゃん」
「パパ」
「うん？」
「お守り。Aちゃんと作ったの」
アメリーの手には、”パパ”の文字と、亀の形が刺繍されたウサギ柄のお守り。
「―…パパにね、お守りあげたいの。お仕事頑張ってって―…」
「ママ、待ってるからって」
「…！うん…ありがとう…っありがとうアメリー…！」
カメちゃんの泣き顔は、見てはいけない気がした。
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夜雨(プロフ) - あやかさん» コメントありがとうございます！ひええ嬉しいお言葉…！お待ちいただきありがとうございます！2作目に続くと思いますので、どうかそちらもご愛読下さい* (2020年3月9日 0時) (
レス) id: d267c079da (このIDを非表示/違反報告)
あやか(プロフ) - 更新嬉しいです！(*^o^*)頑張ってください！ずっと待ってます！ (2020年3月5日 22時) (レス) id: 79ee056cfe (このIDを非表示/違反報告)
夜雨(プロフ) - まのるさん» コメントありがとうございます！とても嬉しいです…！ドラマロスもあってなかなか進まずにいますがお付き合いください…！* (2020年3月1日 13時) (レス) id: d267c079da (このIDを非表示/違反報告)
まのる - 初めまして！グランメゾン東京の夢小説サイトを探していたら素敵なサイトにたどり着きました(*^^*)小説最高に面白いです！ゆっくりでいいので、更新お待ちしてます(*^^*) (2020年2月23日 1時) (レス) id: 99d3374e0d (このIDを非表示/違反報告)
夜雨(プロフ) - satopi_cdさん» コメントありがとうございます！最近停滞しておりお待たせしておりますすみません…！頑張ります！ (2020年2月18日 19時) (レス) id: d267c079da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜雨 | 作成日時：2019年12月16日 12時
