Recipe:10-3 ページ34
あれから芹田くんは、市場の大将のところで鰆の捌き方を習っているのだと楽しそうに報告してくれた。他の皆には内緒で、と得意気な彼を見て安堵する
「A」
『うわっ、な…なんですかナツさん』
1階で棚の拭き掃除をしていると、いつの間にかすぐ横にナツさんが立っていた。それも、あまり機嫌がよろしくない様子で。
「芹田に何か吹き込んだろ」
『吹き込むって。ただどっかのシェフの代わりに、ちょっとお酒を酌み交わしたくらいですー。あ！鰆、ほんとに美味しかったです』
「は？お前酒弱いだろ、炭酸苦手だし」
『ちゃんとわかってますっ！それに京さんも一緒で「…なあ」、え』
私を見下ろしたまま、ナツさんがにじり寄ってくる。後ろには棚がある。横に移動しようとすると、行く手を阻むようにナツさんが両手を棚についた。
あれ？なんだ？このナツさんの対処法わからないぞ
「京野ンとこ行くのか」
『…？や、来週引っ越しますけど』
「そうじゃねぇよ、いやそれもあるけど。だから…」
『あの、ナツさん…その前にこれ、近い…です…』
顔に、体に熱が集まっていくのが自分でもわかる。当たり前だ。幾ら割り切っていても、この状況で平然と出来る程女優ではない
『は…離れてくださ…仕事中…！』
「仕事中じゃなきゃいいのか」
『？！なっ…何言って』
吐息が感じられる程に、ナツさんの顔が近づく。棚についていた手が私の頬に触れそうになって、思わず肩を震わせた
「A、こっち見ろ」
『ゃ…っ…』
…待って、待ってくださいナツさん。変な勘違いをしてしまう。こんな距離で、そんな優しい声で、何を。
きつく目を瞑り、顔を下に向けたまま動くことができない。わからない。こんなこと、ナツさんがするわけないのに。
『ナツさ…』
「A」
『ひぁっ…！』
力任せに抱き寄せられたかと思えば、耳元に唇が寄せられた。もう誰か助けて欲しい。キャパオーバーだ。
どうしてこう、この人は。恥ずかしさで涙が出てくる。自分の身に何が起きているのか。なんの話しをしていたんだっけ。そうだ確か、
「ちょっと芹田！」
「『！』」
唐突に響いたその声に、ナツさんも私も引き戻された。すぐさま体を離し、ナツさんが階段を駆け上がっていく。
1人残されたままこの数分間の出来事に惚けていると、2人の言い合う声が響いた。我に返り、身なりを整え２階に行こうとしたところで芹田くんとすれ違う
「やっぱ俺には何もないんすよ」
そう言い残して、芹田くんは出て行った
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夜雨(プロフ) - あやかさん» コメントありがとうございます！ひええ嬉しいお言葉…！お待ちいただきありがとうございます！2作目に続くと思いますので、どうかそちらもご愛読下さい* (2020年3月9日 0時) (
レス) id: d267c079da (このIDを非表示/違反報告)
あやか(プロフ) - 更新嬉しいです！(*^o^*)頑張ってください！ずっと待ってます！ (2020年3月5日 22時) (レス) id: 79ee056cfe (このIDを非表示/違反報告)
夜雨(プロフ) - まのるさん» コメントありがとうございます！とても嬉しいです…！ドラマロスもあってなかなか進まずにいますがお付き合いください…！* (2020年3月1日 13時) (レス) id: d267c079da (このIDを非表示/違反報告)
まのる - 初めまして！グランメゾン東京の夢小説サイトを探していたら素敵なサイトにたどり着きました(*^^*)小説最高に面白いです！ゆっくりでいいので、更新お待ちしてます(*^^*) (2020年2月23日 1時) (レス) id: 99d3374e0d (このIDを非表示/違反報告)
夜雨(プロフ) - satopi_cdさん» コメントありがとうございます！最近停滞しておりお待たせしておりますすみません…！頑張ります！ (2020年2月18日 19時) (レス) id: d267c079da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜雨 | 作成日時：2019年12月16日 12時
