Recipe:6-3 ページ19
『――柿谷さんがいなくなった…！？』
「ああ。ウニの下処理が出来てなくて今やってる。15分は時間を稼がなきゃならない」
朝の件で機嫌を損ねて、とかではないはず。ともすれば、そもそも妨害目的で入った可能性が高い。そしてそれを仕向けたのは恐らく、うちを敵対視する江藤オーナーだろう。
『…わかりました。食事のペースが早い1番テーブルのお客様からなんとかします』
「頼んだ。俺はワイン回ってみるよ」
『あと、助っ人頼みましょう』
「助っ人って…」
――祥ちゃんがエプロンを受け取り席を立ったのを確認して、次のテーブルに向かう。
くどくない程度の会話を広げ、そのお客様の好きな物、苦手なものを記憶していく。また来店してくださった時に、応えられるように。
けれど時間がネックなのだ。あまり話を広げすぎると、他のテーブルが疎かになる。料理の手が止まってしまうと厨房にも迷惑がかかる。話の切り上げ方に細心の注意をして。
「1番、お願いします」
体感ではあっという間だけれど、時間とホールの様子を気にしながら会話を続けるというのは疲弊するもので。
雲丹のグラティネが出来上がり、メインの鹿肉のロティに準備が取り掛かる。安堵したのをお客様に悟られないよう、配膳を終えてすぐに食器を下げに洗い場に行く
「お疲れ」
『祥ちゃんありがとぉおお…！』
「俺だって、最後まで食えなきゃ困るから手伝っただけだ。ほら水。喋りっぱなしだったんだろ」
『あー、生き返る…！流石の速さだったよ、ウニ』
「…3年半、見習いだったからな」
『あはは！よく愚痴ってたね。…美味しかった？』
「…ああ。」
『なら、よかった。』
「なあA。」
『うん？』
「例えば、尾花さんがフレンチやめるって『やめさせない』…即答かよ」
『やめさせないし、…やめられないよ。絶対に』
「…」
『そんなバカなこと考えてる暇あったら料理作れ。って怒られるよ。…どうしたの、そんな例え話。』
「…」
『祥ちゃんはフレンチが、料理が、好きだよ。人の根底にある”好き”は、どうしたって変わらない』
「…」
『ねえ、祥ちゃん。
―――ナツさんが、何を守ったと思うの』
「ｯ――…！！」
もはやそれは、ただの懇願だった。
あの人のしたことを、想いを。この3年間を。無駄にしないで。お願いだから。
あの人が間違ったことなどしていないと言うなら。私は、恨み言も憶測も全て呑み込むしかない。
…祥ちゃんが握り締めた拳を、私もまた、見ていることしか出来なかった。
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夜雨(プロフ) - あやかさん» コメントありがとうございます！ひええ嬉しいお言葉…！お待ちいただきありがとうございます！2作目に続くと思いますので、どうかそちらもご愛読下さい* (2020年3月9日 0時) (
レス) id: d267c079da (このIDを非表示/違反報告)
あやか(プロフ) - 更新嬉しいです！(*^o^*)頑張ってください！ずっと待ってます！ (2020年3月5日 22時) (レス) id: 79ee056cfe (このIDを非表示/違反報告)
夜雨(プロフ) - まのるさん» コメントありがとうございます！とても嬉しいです…！ドラマロスもあってなかなか進まずにいますがお付き合いください…！* (2020年3月1日 13時) (レス) id: d267c079da (このIDを非表示/違反報告)
まのる - 初めまして！グランメゾン東京の夢小説サイトを探していたら素敵なサイトにたどり着きました(*^^*)小説最高に面白いです！ゆっくりでいいので、更新お待ちしてます(*^^*) (2020年2月23日 1時) (レス) id: 99d3374e0d (このIDを非表示/違反報告)
夜雨(プロフ) - satopi_cdさん» コメントありがとうございます！最近停滞しておりお待たせしておりますすみません…！頑張ります！ (2020年2月18日 19時) (レス) id: d267c079da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜雨 | 作成日時：2019年12月16日 12時
