第七話 ページ7
――Aに俺の気持ちは判らないだろ
先刻久坂に言われた言葉が繰り返し私の頭の中で流れる。
やるせない気持ちを抱えながら下駄箱に向かえば、少し大きめの声で誰かに杉先生が呼んでると声を張る美濃部が見えた。
今の杉先生が放課後にまで生徒を呼び出すとは考えにくい。
何か嫌な予感がすると眉間に皺を寄せれば、どうやら呼ばれていたのは久坂だった様で玄関から踵を返して美濃部についていく。
「だから信じすぎだって･･････」
莫迦みたいに疑わない久坂へ若干の憤りを感じ後頭部を掻き毟りながら呟いた。
久坂の味方ではないが見捨てる事も出来ないなと小走りで二人のあとを追う。
すると、二人が入っていったのは男子トイレだった。
待ち伏せしていたらしい楠本と沢渡がトイレの中から現れ、出入り口を塞ぐ様にたって久坂を見る。
「久坂！」
「おぉ、Aじゃん。何、此奴のこと助けに来たの？最近仲いいなお前等」
そこに割って入ってきた私をまるで見世物のように好奇心の目を向け、言葉を投げる楠本と対照的に沢渡の表情は一気に険しくなった。
「今の杉先生が授業も終わったのにアンタに用なんか有るわけ無いでしょ、ほんっと莫迦。――帰るよ」
「俺は――」
楠本からの話はそのまま流し、久坂に要点だけを伝え手を取って此処から出ようとしたその瞬間
「お前さ、最近マジでウザいんだよ」
そう言って沢渡が壁を叩いた音を合図に美濃部と楠本が動き始める。
「はい、じゃあAも一緒にどうぞ〜」
「ちょ、美濃部！」
こういう時に頼りない久坂は私と一緒に一番奥のトイレへ閉じ込められる。
同じ男なら、と思ってしまうが、一体複数なのだから無理もない。
未だ開けろよと扉を叩く久坂を余所に蛇口を捻る音が耳に届く。
その音を聞いてまずいと久坂を壁から引き剥がし、便器に座らせる。
そして頭の上からブレザーを被せ、便器に片膝をつきながら頭を抱くように抱きしめた。
「えっ、ちょ、A？」
「黙ってて！」
いまいち状況が飲み込めていない当事者に募ったイライラはその一言に凝縮され、その言葉を放つやいなや直ぐさま口を閉じた久坂。
「仲良く頭でも冷やしてろ」
そう言って容赦なくホースから水をかけてくる沢渡にもその側で嬉々として久坂のモノを荒らしているであろう楠本達も、そして何より不甲斐ない自分にも静かに憤りを覚える。
だが時間が経つにつれ、段々飽きてきたのか気付けば三人組は居なくなっていた。
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nanase.(プロフ) - りょうこさん» こんにちは。この度は本作品をお読みいただき誠にありがとうございます！そう言っていただけるととても嬉しいです！これからも頑張って執筆致しますのでよろしくお願い致します！ (2020年6月19日 20時) (
レス) id: 62dfa2fa96 (このIDを非表示/違反報告)
りょうこ - 好きな作品なので、いつも楽しみにしています！3人ともカッコイイので、続きが待ち遠しいです！ (2020年6月19日 0時) (レス) id: ba306ee394 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：nanase。 | 作成日時：2020年4月11日 1時
