第三十五話 ページ35
"彼等は救世主"
・・・・・・と認識したはいいものの、大崎さんの例の一件からほんの数日。
「そんなに送られるのが嫌なの?」
そう問うてきたのは、不思議な顔をして首を傾げて私を見る入江。
何故かあの一件以来高杉・入江・吉田君と何故か当番制のように私の送迎係が出来上がった。
そして今日はなんと三人組。
何故なのだと理由を聞いても応えなければ、止めろと言っても聞かない。
どうしようもない事態に私はただ為す術無く彼等の思惑通りに送られるしかなかった。
「Aって意外に文句言う癖に色々やってくれるよな」
「Aさんて素直じゃないだけなんだね」
――夜にはけしてひとりで出歩くな
お母さんのようなことを真剣な表情で述べた高杉達を思い浮かべながら溜息を吐く。
いつにない表情で御願いされては聞かない訳にはなんとなくいかなかったので言いつけを護ってはいたが、入江と吉田君のその言い様には少しばかり不服だと眉間に皺を寄せた。
「うるさいな。てか大体理由も教えてくれないのに毎回こうも家まで来られちゃ迷惑なんだけど?」
幸い私の両親は共働きで忙しく、互いに家に居ることは殆どない為その辺りは困らないのだが気分としてはあまり良くない。
「理由を知ってどうするんだ。仮に理由を知ってもAにはどうすることも出来ないぞ」
「高杉はまずその物言いから変えてみたら?」
悪態なのか生真面目なのかよく判らない高杉に反論している内に私の家が目の前に映る。
「とりあえずありがとう。なんだかよくわかんないけどまた明日」
端的にそう伝えれば"じゃあ"と颯爽と消え去っていく三人。
数日間にわたる送迎。
窮屈で無いといえばそれは明らかに嘘になる。
私の思考は子供よろしく言いつけを破りたくなる思考に変わり、三人の姿が見えなくなった時点で家の近くにある公園へ家に鞄をおいて出かけた。
公園に着くやいなや思い思いに遊んでいる子供達にその傍らで気を遣いながらお喋りをしているお母さん達。
人間、一人で外に出ると云う事も気晴らしとして大事だなと監視の目が外れてから改めてソレの重要さに気付いた。
そして陽はすっかり陰りを見せ、先程まで遊んでいた子供達の姿も無くなり公園には私ひとりだけとなったその時
「や〜っと一人になったね」
座っていたベンチの後ろから肩を組まれ、冷や汗を流せば耳元でしたり声で囁かれる。
ゆっくりと顔を向けたそこには先日高杉達が倒したあの高校生達が居た。
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nanase.(プロフ) - りょうこさん» こんにちは。この度は本作品をお読みいただき誠にありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!これからも頑張って執筆致しますのでよろしくお願い致します! (2020年6月19日 20時) (レス) id: 62dfa2fa96 (このIDを非表示/違反報告)
りょうこ - 好きな作品なので、いつも楽しみにしています!3人ともカッコイイので、続きが待ち遠しいです! (2020年6月19日 0時) (レス) id: ba306ee394 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nanase。 | 作成日時:2020年4月11日 1時