第三十二話 ページ32
殴られながらも譫言の様にもう大崎さん達に関わるなと言う杉先生。
上からぶら下がっている鎖に片腕を固定させられてようやく立っている様な状態で、それは最早サンドバッグとでも言える光景だった。
見ていられないと視線を逸らすと、杉先生も限界だったのか吊されていた腕が鎖から滑り落ちて身体ごと地面へ倒れ込んだ。
そして全身痣だらけになり、所々血が滲んでいる杉先生の元へと四人で駆け寄る。
すると、杉先生は力無い手で大崎さんの手をとても大事そうに自分の手と重ねた。
痛々しいその様とそんな凄惨な状態に耐えられなかった私は目に溜まった涙をただ零さないように必死に平然を取り繕って静かに先生の名を呼んで苦笑した。
その時、
「僭越ですが！」
聞き慣れた声が倉庫にこだました。
誰もがその声がした方へ視線を向ける。
すると、そこに居たのは警察や通りすがりの人ではなく、高杉・入江・吉田君の三人組だった。
ゆっくりと余裕綽々に歩いてくる三人へ、誰だと問うた高校生への返答は通りすがりの中学生ですという何とも高杉らしい返事で応対していた。
すると、高杉と入江とは対象的にすぐこちらへと駆け寄ってきた吉田君。
「よ･･････しだくん･･････」
「電話くれてありがとう」
震える唇からやっと出てくれた言葉は情けないくらいに私の心境を物語っていた。
そして、ついこの間に吉田君からポケットに突っ込まれたメモには"困ったことが起きたら必ず連絡してね"と書いてあったのでそれを思いだし、つい先程吉田君へと電話した。
正に藁にも縋る思いだったのだが、本当に来てくれるとは思っていなかった反面この状況をどう打開するのか困惑している部分もあり、私の脳はもう既にパニック状態だった。
「もう大丈夫だよ。だからほら、泣かないで」
「A･･････泣かせたかった･･････わけじゃないんだけど･･････ごめんな･･････」
安心から出た気の緩みで流れてしまった涙は、私よりも重傷である先生にまで心配をかけてしまった。
それに申し訳なさを覚えつつ、そっと優しく頭を撫でてくれた吉田君に心の中で感謝をする。
その瞬間、金属同士が擦れ合う金切り音が聞こえて真逆と高校生達へ視線を向ける。
「えっ」
すると、不敵な笑みを浮かべている高杉達と同様に獲物が狩りをするかのようにニヤついた表情で二人に近づいていく高校生達。
その様子を見てこちら側の誰もが状況を理解し、まずいと固唾を飲んだ。
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nanase.(プロフ) - りょうこさん» こんにちは。この度は本作品をお読みいただき誠にありがとうございます！そう言っていただけるととても嬉しいです！これからも頑張って執筆致しますのでよろしくお願い致します！ (2020年6月19日 20時) (
レス) id: 62dfa2fa96 (このIDを非表示/違反報告)
りょうこ - 好きな作品なので、いつも楽しみにしています！3人ともカッコイイので、続きが待ち遠しいです！ (2020年6月19日 0時) (レス) id: ba306ee394 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：nanase。 | 作成日時：2020年4月11日 1時
