第二十九話 ページ29
「なんだよ、アイツら!大崎の気持ちも考えないで!」
なんとか場は収まり、あの三人は教室へ戻っていった。
今は私と久坂しかいないその空間に久坂は苛立ちをぶつけるように地団駄を踏んで言い放つ。
その様子を見て、あの人達も一応考えてはいるよと静かに口を開いた。
「・・・・・・A」
「目には目を、歯には歯をってね」
あの三人組は今の大崎さんの気持ちを理解出来ないほど馬鹿ではない。
けれど、相手がそうするならこちらもそうするまでだと同じだけの害を浴びせて理解させないと気が済まないらしい。
彼等の言う"この学校を変えに来た"というのは、"ダメ教師達を更生させる若しくは潰す"という意味合いでおおかた間違いはないように思う。
ありがた迷惑とはまさにこのことだと私は人生で初めて目の当たりにしたのかもしれない。
「Aはあの三人の味方なのか?」
「何でよ・・・・・・――というより物事をすぐ敵味方だけで考えないの。それが世の中全てじゃないんだから。勿論私もさっきみたいなのは嫌いだよ」
久坂には私の発言が三人を擁護している様に聞こえたらしく、訝しげな顔で味方なのかと問われた。
ソレに溜息を吐きながら至極ぶっきらぼうに返答をする。
加えて不愉快な誤解をしかけた久坂へお返しに軽くデコピンをおみまいし、それを受けて仰け反る久坂を目尻に再び私達の方へ駆け寄ってくる人影に視線を移す。
「じゃあなん――」
「Aさん」
「吉田君・・・・・・。どうしたの?」
話かけた久坂を遮って目の前に立つ吉田君。
さっきの今で笑顔を崩さずに再度ここに来るなんて相当メンタルが強いなと独りでに心の中で感心してしまう。
吉田君はそんな私の思考も気にせず、"コレ"っと小さく折りたたまれた紙切れを見せてきた。
「なにコレ?」
ソレを凝視しつつゆっくりと手を伸ばして受け取ろうとしたその時、伸びてきた私の手を躱す様にその紙切れを私のブレザーのポケットへ勝手にしまい込んでしまった。
「ちょっ、」
「よろしくね」
そう言って上から私のブレザーのポケットをポンポンッと軽く叩くと屈託のない笑みを浮かべてまた教室へ戻っていってしまった。
唐突過ぎる事態に脳は上手く動かず、吉田君の姿が見えなくなった廊下と紙切れが入っているポケットを二度見してボソッと訳がわからないと呟いた。
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nanase.(プロフ) - りょうこさん» こんにちは。この度は本作品をお読みいただき誠にありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!これからも頑張って執筆致しますのでよろしくお願い致します! (2020年6月19日 20時) (レス) id: 62dfa2fa96 (このIDを非表示/違反報告)
りょうこ - 好きな作品なので、いつも楽しみにしています!3人ともカッコイイので、続きが待ち遠しいです! (2020年6月19日 0時) (レス) id: ba306ee394 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nanase。 | 作成日時:2020年4月11日 1時