第二十話 ページ20
「さっき滝先生と俺達のこと見て回ってたでしょ」
「Aさんって意外と好奇心旺盛なんだね」
まさか吉田君にまで調査していたことがバレていたとは計算外だった。
二人が醸し出す笑顔からはそう簡単に裏を取れると思うなよと言われてる様にすら思える程少し真に迫るものがある。
その姿に最早何も言えず引き攣った表情を浮かべて苦笑した瞬間
「A」
「え、何･･････ですか？」
仏頂面をしたままの高杉に苗字を呼ばれ、驚いて数歩後退りをする。
反射的にでた言葉は最終的に敬語へと変わり、あからさまに自ら溝の肥大化に貢献してしまった。
「高杉君怖がられてるね」
「俺はさっきちゃんと悪い印象は払拭したからな」
吉田君も入江もそれをネタに間へ立つ高杉へ嬉々としながら弄り始めた。
どこか動揺している様な表情で二人の顔を交互に見る高杉。
冷静を装っていても所詮高杉も一人の中学生に過ぎない。
間違いを赦せないなんだかんだで優しく繊細な生真面目人間なのではないだろうかと思う時がたまにある。
「俺、本当は歌は上手いんだ」
――だからどうした･･････
ボーッと高杉について思考していれば、ボソッと聞こえてきた言葉に真顔のまま固まり心の中で軽く突っ込みを入れた。
なんと返せば正解なのか図りかね若干の間が空いてしまった時、ふと先刻の合唱部を見ながら大笑いした自分の姿が脳裏に過ぎる。
気にしていたのかと遅すぎた理解に対して既に空きすぎていた間は言葉を発するのに躊躇するには十分すぎる程だった。
けれど、その先の返答を待つ三人の視線は私に向かって逸れることはない。
「あ〜うん、でも君ら三人に苦手なものがあるって方が驚きだよねうん、わかる。三人とも歌唱力ありそうだしね」
歌が上手いって羨ましいわ〜と当たり障りなく笑って誤魔化す。
すると、何が面白いのか急に鼻で笑って微笑する入江。
「嘘くさ」
「ばっ、このやろっ、――私入江のそういうとこ嫌いだかんな！」
思いがけない所で直球を食らい、しどろもどろになりながら出来る限りの仕返しを入江にするが特に相手にもされずに笑われて流される。
どこか楽しんでいるような姿に面白くない私は眉間に皺を寄せて不快感を露わにする。
そのまま不満そうな顔を隠そうともせず三人を一瞥して学校をあとにした。
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nanase.(プロフ) - りょうこさん» こんにちは。この度は本作品をお読みいただき誠にありがとうございます！そう言っていただけるととても嬉しいです！これからも頑張って執筆致しますのでよろしくお願い致します！ (2020年6月19日 20時) (
レス) id: 62dfa2fa96 (このIDを非表示/違反報告)
りょうこ - 好きな作品なので、いつも楽しみにしています！3人ともカッコイイので、続きが待ち遠しいです！ (2020年6月19日 0時) (レス) id: ba306ee394 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：nanase。 | 作成日時：2020年4月11日 1時
