第十五話 ページ15
そしてその日から杉先生の中で何かが変わったらしい。
朝一番で校長を説得し、統一テストを受けられる様にしたり、今まで注意が出来なかった沢渡達にも注意をしたりと。
極めつけは今教壇に立って言っている台詞――
「この学校は無くなってしまうかもしれない。でも俺は何があっても皆のことを全力で受け止める。だから先生を信じて欲しい」
変わったと言うより最早二重人格なのではと疑ってしまう程の変わりようだ。
浅く溜息を吐きながら未だ眩しい限りの表情を浮かべる杉先生へ、何処かで見たことのある天然男と似ているなときっと嬉しそうな顔をしているであろう久坂の背中を見つめる。
やる気が空回りしなければいいなと天然にありがちな失敗を懸念して机へうつ伏せになる。
そして期待を裏切らない杉先生はその翌日に予感を的中させる出来事を起こした。
テストといえど焦らず時間は早すぎずをモットーにしている私はいつも通りの時間に学校へ登校した。
欠伸をしながら校門へ向かえば、なにやら久坂が不安そうに辺りを見回しながらそわそわしている。
「あ、A･･････」
「え、何、どうしたの？テストだからあと少しで教室行った方が良いと思うけど」
私を視界に捉えるやいなや駆け寄ってきた久坂へ何があったのか問いかけた。
すると、言葉を詰まらせながら静かに杉先生の名を呟く。
その瞬間、やっぱりかとまるで頭痛でもするかのようにこめかみに手を当てて溜息を吐いた。
「テスト用紙が入ってたロッカーの鍵を家に置いてきちゃって、今取りに行って――」
「それ何時の話？」
「判らないけど――」
呆れがちに久坂から話を聞いていた時、聞き慣れない音が私達の耳へ届く。
二人して顔を見合わせ、沈黙の侭頷いて音のする方へ向かった。
そして目に映ったものは入江と吉田君が土手の木々を草刈り機で伐採している所。
「何じゃこりゃ」
同じように音に釣られてきたらしい滝先生と三人で呆然と作業をしている二人を見つめる。
それも束の間、どこからともなく聞こえてきたヘリコプターの音に今度は空を見上げた。
視界には淀んだ空に一機のヘリコプターが停滞している様子が見える。
「は？」
素朴に漏れた心の声はその数秒後、宙を舞う杉先生を見て言葉を失った。
それは私だけでなく、同様にこの場にいる久坂と滝先生も押し黙る。
一体全体私の周りでは何が起っているというのだろうか。
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nanase.(プロフ) - りょうこさん» こんにちは。この度は本作品をお読みいただき誠にありがとうございます！そう言っていただけるととても嬉しいです！これからも頑張って執筆致しますのでよろしくお願い致します！ (2020年6月19日 20時) (
レス) id: 62dfa2fa96 (このIDを非表示/違反報告)
りょうこ - 好きな作品なので、いつも楽しみにしています！3人ともカッコイイので、続きが待ち遠しいです！ (2020年6月19日 0時) (レス) id: ba306ee394 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：nanase。 | 作成日時：2020年4月11日 1時
