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｀
PM
￣￣￣￣
カツカツと。コツコツと。
ブーツの踵を鳴らし歩いている。
繁華街の脇道。
人通りはそれなりだが、大通りに比べるとやはり格段に少なく感じてしまう。
カツカツ、コツコツ。
短い茶髪を風に遊ばせ、長い脚を大きく踏み出し踵を鳴らしている。
そう、ワザとだ。
そうすることで自然と人は離れ、妙な威圧感と存在感を周囲に与えることが出来る。
『…ー……』
彼女は他人と必要最低限の関わりを望む。
それ以上は望まない。
それが自ずと歩き方や立ち姿、態度に現れてくるのだろう。
しかし、それをせずとも彼女は独特の雰囲気を放っていた。
目鼻立ち、髪型、長い手足とそれに見合う身長。
男とも女ともつかない中性的な容姿は、あまりにも整いすぎていた。
そしてそれ故の静かな圧と異様さが、確かな彼女の魅力として存在する。
『……ー…』
その長いまつ毛に包まれた、酸化した赤っぽい蒼鉛のような色と目が合おうものなら、その瞬間全てを奪われる。
美しい、と視覚を。
馨しい、と嗅覚を。
甘美だろう、と味覚すらも。
全神経が叫ぶのだ。
あれは極上だと、そう告げる。
性別すら分からぬその妖しさが、味わい深い幻覚を魅せる。
それだけのものが彼女にはあった。
『…ーー……♪』
鼻歌だろうか。
無表情の彼女は歌を口ずさみ続けていた。
一定のリズムで、規則正しく音程を守るように上下する声。
女性にしては低めの、ハスキーな音で彼女は口ずさむ。
『ーー…♪』
その音はごく小さなもの。
恐らく彼女自身にしか聞こえていないだろう。
レンガ作りの道に踵を打ち付け、行き交う物を横目に目を細める。
人、自転車、馬車、自動車、二輪車…。
まるで時代がぐちゃぐちゃに入り混じって混乱しているかのようだった。
それらを見送る彼女の表情に、特筆するような感情は浮かばない。
『ー…ーー♪』
口から吐き出す息が白く凍り、ゆらゆらと掻き消えていく。
見慣れた煙草の灰色とは違う、真っ白な煙。
『……』
こうなりたいものだなと、彼女は自嘲気味にほんの少しだけ笑った。
口の端をミリ単位で引き上げただけの笑みだった。
￣￣￣￣￣￣
そういえば"親衛隊"とか大丈夫なのでしょうか…
ナチス関係のものなので、どうしようか少し悩んでいます。
マナーなどの点で線引きがあるようなので、もし触れているようであればご指摘下さると嬉しいです。
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にらもやし(プロフ) - ささはらさん» コメントありがとうございます。言葉選びにはとても気を使っているので、楽しんでいただけているようで大変嬉しいです。更新頑張らせていただきます。ささはらさんも勉強頑張ってね…！ (2018年3月4日 19時) (
レス) id: 1d32708f6b (このIDを非表示/違反報告)
ささはら(プロフ) - 事細かな描写への言葉選びが卓越していて、読み進めるのが大変楽しいです。語彙が多いのが羨ましい限りです…。勉強の合間にいつも読ませて頂いています。更新頑張ってください、全力で応援してます。 (2018年3月4日 0時) (レス) id: ed6ccbb613 (このIDを非表示/違反報告)
にらもやし(プロフ) - もろとさん» コメントありがとうございます。美しい、とは勿体ないです…ありがとうございます。とても嬉しいです、これからも精進していきますのでよろしくお願いします (2018年2月15日 13時) (レス) id: 1d32708f6b (このIDを非表示/違反報告)
もろと(プロフ) - 読みはじめて最初に出た言葉が「わぁ！」でした。とても美しくて、読んでいると頭に映像が流れ込んでくるみたいです！凄く好きです。これからも頑張ってください！ (2018年2月14日 20時) (レス) id: 8eb97f1a18 (このIDを非表示/違反報告)
にらもやし(プロフ) - 白玉(つぶあん)さん» コメントありがとうございます。言葉や言い回しにはとても気を遣っているので、そう言って貰えるとニヤついてしまいます。更新頑張らせていただきます (2018年1月3日 21時) (レス) id: 1d32708f6b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：にらもやし | 作成日時：2018年1月3日 13時
