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￣￣￣￣
「──、─────…」
繰り返し報道される影住の演説に、ニュース番組のコメンテーターが独自の解釈を述べている。
当たっているようで的外れな彼等の見解合戦は、影住の側近を務める出久にしてみると中々に滑稽な光景であった。
「何も分かってないな」
穏やかに、凪のような声色で出久は呟く。
手元で銃を遊びながら、真剣に議論を交わす人々をテレビ越しに嗤っているのだった。
言葉には、発された通りに受け取っていいものとそうでないものがある。
そのまま受け取るべき内容を下手に勘繰ったところで、実際の言葉にそれ以上の意味を考えてしまうとそれは妄想の域になる。
「どうして素直に受け取れないんだろう」
出久は懐疑的な現代社会に仄かな哀しみを覚えるのであった。
「まあ、しばらくすれば世間も慣れるかな」
手元の銃を優しく撫でる。
USJ襲撃で爆豪を撃ち抜いたものとは違う、護身用に特化した小型の黒い体躯が、年齢の割に傷跡の多い掌で踊っている。
1年。1年だった。
彼がその感触に慣れるまで、1年の歳月を要したのだ。
「…懐かしいな」
初めてそのグリップを握ったのは中学3年生の春、ヴィラン連合のアジトで。
影住に貰ったコルト・ガバメントだった。
中学生の手には大きく重く、ずっしりとした重量感。
その殺傷能力の重みが馴染むことはいつまでも無いと、出久はそう思っていた。
だが今ではどうだろうか。
1年が経ち、初めは恐ろしかった引き金の感触、発砲音、発砲後の振動、銃身の跳ね上がり…。
そして誰かを撃ち抜くことにさえも、随分と慣れてしまった。
『人は順応する生き物だ。この喧騒もじきに止むよ』
今だけさ、と笑う影住を思い出し、出久はふっと微笑む。
そうだ、慣れる。人は慣れるのだ。
生まれ持った高い適応能力で以て全てを淘汰し社会を構築、発展させてきた。
今更その傲慢な性質が変わるわけでないし、きっとそんな事は未来永劫起こり得ない。
いずれ世間はイノセントに"慣れ"、イノセントは社会に"馴染む"。
つまり、出久の敬愛する影住の思想が"浸透"していく。
"オールフォーオール"という彼の思いが染み渡れば、そうすればきっと。
「社会が、ヒーローが」
「……ヴィランが、救われる。」
彼の瞳は輝いた。
───────
嵐の前の静けさ
お久しぶりです
80年振りの更新です
一生懸命思い出しながら書きました
終わり
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ディちゃん(プロフ) - その轟君を私にくれ (2022年3月13日 22時) (
レス) @page38 id: 7ad8b1babb (このIDを非表示/違反報告)
じぇへな - このほの暗い?ダーク？感がすごくすきです。これからの展開も楽しみに待ってます (2020年1月2日 17時) (レス) id: 31019885e4 (このIDを非表示/違反報告)
にらもやし(プロフ) - おれんじぜりーさん» コメントありがとうございます。これからの展開も楽しんでいただけると幸いです (2019年11月26日 1時) (レス) id: 1d32708f6b (このIDを非表示/違反報告)
おれんじぜりー - 途中から轟が洗脳されてる…いいですね〜笑 (2019年3月10日 14時) (レス) id: 89ff127a12 (このIDを非表示/違反報告)
にらもやし(プロフ) - にあさん» コメントありがとうございます。随分お待たせしてしまいましたが更新しました。よろしくお願いします (2019年2月9日 13時) (レス) id: 1d32708f6b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：にらもやし | 作成日時：2017年11月18日 12時
