47 途中経過 ページ8
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行方不明事件から1週間ほどが経った頃。
和風の大豪邸は静まり返っている。
轟「……」
住人である轟焦凍は一人、自室にて精神統一を図っていた。
しかし、永遠にも思えるほど頭に木霊する囁きがそれを妨げている。
『憎い憎いその左の炎、いっそ消してしまってはどうだろう』
ニンマリとした笑みを浮かべ、影住は轟にそう言った。
氷を溶かせる程度を残しておけばいいのだと、そう言ったのだ。
確かに父から受け継いだ左の炎は、轟にとって憎いものではあった。
自分を責め、痛めつけ、そして何より母を傷付け追い詰めた。
決して許される所業ではない。
そして当然許すつもりも毛頭なかった。
だが。
『君の大切な人達は、それを望んでいると思う？』
この指摘は的確で、轟焦凍の脆弱な心を揺さぶるには十分であったのだ。
轟「……」
自らの復讐に囚われ、周りを見る余裕が無くなっていた。
だからこそ、影住のその言葉が深くつき刺さったのだろう。
"俺は、間違っているのかもしれない"
"家族を、蔑ろにしていた？"
"優しい姉を、傷ついてしまった母を、見ていなかった？"
"ひどく自己中心的なのでは？"
"自分の事しか考えていなかったんじゃ？"
"結局俺は、親父と同じになって、？"
ぐるぐると堂々巡りを繰り返す思考。
胸が締め付けられるような圧迫感からか、自然と呼吸が荒くなる。
轟「は…」
今までの自分の行いが、ここまでくるために掲げていた目標が、もう何もかもが間違っているように感じた。
轟「俺は、どうすれば…」
後悔はない。だが反省もしてこなかった。
父に憎悪を向けることでその他のものを見ないようにしてきた。
それはきっと、影住の言う通りに稚拙で傲慢な子供の発想でしかない。
だからこそ、彼の言葉が突き刺さったのだろう。
轟「俺は、俺は…」
彼はひとり頭を抱え、唸り声をあげている。
思春期の隙間だらけの心にはあまりにも重すぎる問題であった。
苦しい。分からない。苦しい。分からない。
自分の定義が、轟焦凍が轟焦凍であるために保ってきた自尊心と自己肯定感が、崩れ去ろうとしているのかもしれない。
轟「っ…！」
齢16にも満たない少年は、小さく震えていた。
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轟焦凍 途中経過
『良心の呵責に苛まれて折れろ』
彼の計画は緻密、繊細、狡猾の三本の矢から成り立っている。
これはその中の一本である狡猾に当たる部分である。
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ディちゃん(プロフ) - その轟君を私にくれ (2022年3月13日 22時) (
レス) @page38 id: 7ad8b1babb (このIDを非表示/違反報告)
じぇへな - このほの暗い?ダーク？感がすごくすきです。これからの展開も楽しみに待ってます (2020年1月2日 17時) (レス) id: 31019885e4 (このIDを非表示/違反報告)
にらもやし(プロフ) - おれんじぜりーさん» コメントありがとうございます。これからの展開も楽しんでいただけると幸いです (2019年11月26日 1時) (レス) id: 1d32708f6b (このIDを非表示/違反報告)
おれんじぜりー - 途中から轟が洗脳されてる…いいですね〜笑 (2019年3月10日 14時) (レス) id: 89ff127a12 (このIDを非表示/違反報告)
にらもやし(プロフ) - にあさん» コメントありがとうございます。随分お待たせしてしまいましたが更新しました。よろしくお願いします (2019年2月9日 13時) (レス) id: 1d32708f6b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：にらもやし | 作成日時：2017年11月18日 12時
