私が懸賞首？笑えない冗談ですね。〜ヨコハマの髪長姫の御伽噺 第二章〜【 文スト】

49話 ページ6

敦side

日本刀が羅生門とぶつかり、薄暗い路地裏に金属音が響く。


一言で言うと、青龍は強かった。

跳躍力と瞬発力が並外れていて、羅生門二つ同時に相手をしている。



呆然と眺めていると、肩を叩かれた。

敦「うわぁっ」

獏《シィ〜、静かに。

私ですよ、わ・た・し》

敦「なんだ、獏か……」

獏《とってもいいリアクションだったので、いつもならからかうんですが、今はそうもいかないんですよねェ


簡潔に言います、青龍が芥川サンの気を引いているうちに逃げなさい。》


敦「え？」

曰く、獏も青龍もそのほかAの異能生命体も、Aが怪我をしているのであまり力が出ない

獏も今、ナオミさんとAの姿を同時に隠していて、僕の姿までは隠せないから、全力で走って逃げろ、とのことだった。

確かに、芥川は青龍の相手に集中していて、僕が逃げる隙もあるかもしれない。

だけど、このまま逃げていいのだろうか。


国「社の看板を汚す真似だけはするな」

国木田さんに言われた言葉が頭をよぎる。


敦「青龍も、全力を出せないんだよね。」


漠《…………敦。あなたはここで死んだら此れで “ お終い ” なんですよ？

最悪、私や青龍は消されたとしても数日力が出ないだけで済みますがねェ。


優先すべきことは私たちの命じゃない、キミの命です。》


そこまで言うと、獏は僕の目を覗き込んで再び口を開いた。


漠《あの男はホンキです。

殺さないにしても、日常では味わう必要のない痛みを味わうことになるかもしれない。


それでも行きますか？》

僕が頷くと、獏は一瞬驚いた顔をして、ニヤッと笑った。


漠《フフフ、まあ、骨は拾いましょう》

敦「まって勝手に殺さないで！」


いまのタイミングでは真面目にシャレにならない。


ニヤニヤといつも通り笑う獏の横顔からは、ほんの少しの優しさが滲んでいた。

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