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「事情はイロイロやで、もう死んどったり 子どもん頃に捨てられとったり…

 せやから全員、同じ施設の出身やねん。

 …あん頃は色々あったなぁ…俺ら全員、最初っから仲良かったワケちゃうし…」


地面に寝転がった子犬のお腹をワシャワシャと撫でながら

何かを思い出すように目を細め、TOPPOはゆっくりと言葉を続けた。


「…たぶん、想像でしかないねんけど

 たぶん今Aliceが考えとること、俺にも分かる。

 ちゅーか、俺も同じこと昔は考えとった。

 この仕事やるようになって、

 俺チカラ強ないからどうすれば役に立てるやろって考えて、

 薬品作ってみんなが武器として使えるようにしたり…。

 そうやって『仲間』って胸張って言えるようになってからも

 特に俺は…本当の気持ち隠して、ほんまの俺を誰にも見せんようにして」


 

初めて聞かされるTOPPO自身の話。

薬品作るんだ、とか

華奢だなって思ってたけどやっぱり強くはないんだ、とかぼんやり聞いてたら



「メガネ掛けるんもそう、表情見えにくくして

 そうやって壁作って鎧着て距離とって…

 自分を守っとった、自己防衛のつもりやった。

 でも、それって自己防衛でも何でもないって 少し前によーやく気付いてん」


まるでAliceの心の中を覗いたかのような、

薄々感じてたことに、それでも自分を守るために目を背けようとしていた事実に

無理やり向き合わせようとしてくる言葉が彼女の弱さに突き刺さった。


 

「やってそれって…みんなのことを俺が信用してないってことやん。

 どーせ、みんなも俺が要らんくなったら捨てるんやろ?

 裏切るんやろ?

 そう思うのって…みんなと一緒に過ごしてきた時間に対して、

 俺が裏切っとることになるやん。

 自己防衛なんかやなくて、自信がなかっただけやった…

 『どーせ人間みんな裏切る』とか言って、裏切ってたのは俺の方やってん。

 みんなに対しても、自分自身に対しても」


 


子犬だけを見詰めて話す彼は

初めて会った時よりも細いフレームのメガネを掛けていた。


 


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茎若布(プロフ) - うさたぬき。さん» わああ、ありがとうございます!励みになります…!少しずつの更新になってしまいますが気長にお付き合いください(*´ ˘ `人) (2017年9月8日 0時) (レス) id: 435905ec86 (このIDを非表示/違反報告)
うさたぬき。 - 凄く続きが気になります!更新待ってます^^ (2017年9月6日 16時) (レス) id: d32628a784 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くきわかめ。 | 作成日時:2016年7月21日 21時

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