青銅の迷い犬弐 (ページ21)

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陸拾漆沈黙の塔、鴉の宴ページ21

無事街の混乱も収まり探偵社へと戻る
書類やファイルは散らかっているもののそれ以外には被害は無く安心した

先程まで鳴っていた与謝野さんの治療の音も止み、奥から与謝野さんが出てくる

与｢ふぁーあ、あンな人数治療したのは久しぶりだよ｣
｢お疲れ様です、与謝野さん。お饅頭食べますか？｣
与｢貰うよ｣

そう言って私達はソファに腰をかけ目を閉じる
今まで気を張りつめていたからか安心した途端どっと疲れが出てきた

与「なんだい、随分と疲れているようじゃないか。妾が治療して疲れをとってあげようか？」
「勘弁してくださいよ…」

手に取った饅頭を口に運び餡子の濃厚な味を噛み締める
その時扉が開いたかと思うと外に歩きに行っていた社長と、敦君が入ってきた
何時もより少しだけ顔を引き締めている社長に此方も気を引き締める

福「全員よく聞け、これから我々武装探偵社はーーーーポートマフィアと協力体制となる！」

社長の声が社内に響き渡る
そこにいる誰もが自らの耳を疑った

与「社長、それは本気なのかい？相手さんも了承したのかい」

与謝野さんがそう尋ねる

福「いいや、まだだ。これから面会の場をつくる」

どうやらまだ決定した訳ではないらしい
しかし例の騒動の時の協力者を思い返すと的外れな作戦ではないのかもしれない

それにーー
恐らくこれは敦君の提案だ。
社長も一時は渋ったのだろうが、敦君が相手だったからか断れなかったのだろう
その場にいる人も同じ考えだったようで、反対する人は誰もいなかった

ーー
敦「あの…Aちゃん…」

先の騒動の書類を整理していると後ろからそう声がかけられる

「？どうしたの、敦君」

声の主は敦君だ
目を伏せて少し暗い顔をしている

敦「あの…君に謝りたくて。あの時…Qの異能にかかった時その…首を締めてしまったから。敵の異能にかかってたとはいえ、酷い事を…！」

「嗚呼、何だその事？いいよ、別に気にしていないし」

私はそう言うが敦君の顔は晴れない
よっぽど責任を感じているのだろう

こういう時は相手に少しのお詫びをしてもらうとその相手も気分が晴れる

昔誰かが言っていた

「ねえ、敦君。スイーツパーラーに連れて行くっていう約束したよね」
敦「え、うん。鏡花ちゃんの時に」
「その時頼む物にアイスを一つ、追加してもいいかな？」

そう言うと敦君は顔を綻ばせる

敦「うん、勿論！」

そうして私達は目を合わせて笑いあった