青銅の迷い犬弐 (ページ18)

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陸拾肆 Q ページ18

ナ｢そうだ、紹介しますわ。列車の中で知り合ったのですけど…｣

ナオミちゃんの言葉に合わせるように其の少年は出てくる
そして少しよろけたように敦君にぶつかった
此方を見つめる表情は、相変わらずどこか不気味さを感じるものであった

Q｢籠のなぁかのとぉりぃは｣

かごめかごめの一節を突然歌い出した彼はバッと自分の服の、腕の部分を捲し上げる
そこには無数の刃物が固定されており、血が流れていた

｢ナオミちゃん、春野さん！下がって！｣

敦君と私は2人を守るように前に出る

Q｢いついつ出遣ぁる後ろの正面だぁれ？｣

それと同時に彼の持つ気味の悪い人形がケタケタと笑い出す
そして徐に頭を割いていった

すると隣に居る敦君の目から血のようなものが溢れだしてきた
どういうことかと戸惑っていると彼はそのままそこにいた春野さんの首を絞め始めた

｢あ、敦君?!｣

驚きその腕を離させようとするが力が強すぎて何も出来ない

｢…ごめん、敦君｣

鞄の中から小刀を取り出すと肘の辺りを思い切り刺激する
力が抜けたようで春野さんを離す

｢ナオミちゃん！春野さんを連れて奥に逃げて！｣

ナオミちゃんはその言葉に慌てたように従う
少し呻き声をあげながら敦君はこちらへ向かって来る
大方精神操作系の異能だろう
それでは私の異能は効力は持たない
冷や汗が止まらない

動向を伺っているとフッと視界から敦君が消える
不味いと後ろを振り返ると同時に首を絞められ持ち上げられる
虎のスピードを持った状態では適うはずも無かった

敦｢見ろ！此れが僕だ！僕の力だ！｣

何かの幻影に囚われているように敦君は叫ぶ
するとそこに太宰さんが駆けつけてくる
太宰さんの声に我に返ったように私の首を絞める手を離す

敦｢ぼ…僕は何も…ただ…｣

まだ幻影の中にいるように敦君は呟く

敦｢やめろ！やめろぉぉおぉ！｣

普段の彼からは想像のできないほどの破壊行動を続ける姿に事務員の二人は完全に怯えてしまっている
私はただ、二人の傍に座り呆然と敦君と太宰さんを見つめる事しか出来なかった