参拾伍 うつくしき人は寂として石像の如く ページ37
カコン……
ししおどしの素朴な音がする。
場所は高級料理店橘堂。
マフィアの少女の要望通り私達は湯豆腐を食べに来ている。
正確には湯豆腐を食べるのは1名で、後は水やお茶なのだが。
涙を流す敦君を横目にお茶を啜る。
無視を決め込むつもりだったが縋り付く様な目に負けはぁと溜息を着く。
「まあ少しは出すことにするよ、だからそんなこの世の終わりの様な顔をしないで」
こう私が言うと滝のように涙を流す敦君。
まあその後に今度スイーツパーラーに連れて行ってくれと頼むとまた絶望の涙を流していたのだが。
湯豆腐を食べ終わり一息つき鏡花ちゃんから諸々の事を聞く。
ご両親が亡くなり孤児となったあと、異能目当てのマフィアに拾われたそうだ。
彼女の異能は夜叉白雪。
携帯から命令されることに忠実に従う『夜叉』を出せるというものだ。
そしてその夜叉を電話越しで操っていた主は
泉「…芥川という男」
芥川龍之介ーー
例の襲撃事件で因縁があるのだろう、敦君は顔を強ばらせていた。
国「そうか。俺は先に社に戻って報告する。敦、A」
国木田さんは顎で外に出るよう促す
国「娘を軍警に引き渡せ」
廊下に出た途端にそう言われる。
中「でもそんな事したら!」
「35人殺し。間違いなく死罪だろうね。その一方彼女はマフィアの裏切り者でもある。だから引き渡さなくても報復として殺される…ですね、国木田さん。」
中「そんな…」
酷なことだとは分かっている。
彼女の意思で殺しをしていた訳では無いと言うのも敦君から聞いた。助けたい気持ちだって勿論ある。
ただ世間から見たら鏡花ちゃんは35人殺した殺人犯、ただその事実だけが映し出されるのだ。
国「救えない者を救って乗せればーーー共に沈むぞ」
その国木田さんの言葉が重くのしかかってきた。
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作者名:コンバスのマリネ | 作成日時:2021年4月7日 23時