受験生の告白【黄】２ ページ25
…おーおー痴話喧嘩…
イブに大人が受験生の横でやらなくてもいいのになあと
思いながら、つい私の耳はそっちに傾いてしまう。
「…隠しとるつもりはあらへんけど、わざわざ報告することちゃうやろ」
「……」
「あーめんどっくさ…読めばええやんお前も」
そう言って、彼はお尻のポケットから少しくしゃっとなった手紙を取り出し、彼女に無愛想に差し出した。
「ーー…」
…憮然とした彼女が手に取りそれを読んでいる間、
上の空の私のシャーペンが紙の上を滑る音と 脚を組んだ彼が飲み物を啜る音がクリスマスソングの合間を縫って店内に響く。
「ーー…」
…どんな内容かなあ、
どうやら元カノからの手紙を隠していたってことでしょ、
読ませるとかしないでさっさと捨てればいいのに、
やばい、突然彼女がキレたりしたらどうしようと、
なんとなく肩に力を入れながら そわそわ、しているとーー…
「…よかった」
「…ん」
…さっきまで怒っていたはずの彼女が
小さな声でそう言って
「…Aさん、幸せなんだね、今…」
「…ん」
肩を震わせて泣き始めるから、私は混乱の極みに至る。
「…そっか…よかった…」
「…ん」
「…私、あの人のこと、好きだったんだ」
「…ん」
「…いつか謝りたいな」
「…ん」
えええええ、と
戸惑う私を他所に、
おもむろに彼は被っていたキャップを取り、彼女に被せるーー…
…
「…へへ」
「…何わろてんねん」
「…亮が優しいから」
「…アホやな」
…それから、彼は“よっしゃ行くぞ”と立ち上がる
慌てて追いかけた彼女は、“亮、だいすき”とその腕に絡みつき二人は歩き出す
黒づくめの二人
その幸せそうな横顔
最初からコーディネートしていたみたいに、黒い帽子は美しい彼女によく似合っていてーー…
ーーー…
はああああ、と
大きなため息をついて、私は開いていたノートをバタンと閉じ、立ち上がる。
「…もしもし、今どこ？」
「あれ？ ミハルも来る気になったー？』
「ん、ダッシュで行く」
馬鹿馬鹿しくなったのだ急に、
意地を張った挙句こんな聞き耳を立てている自分に。
「メリークリスマース」
…駅前、走っているとすれ違い様、謎のサンタの声が背中から聞こえる。
…今日くらい神様も赦してくれるだろう、
ごめんごめんと合流すると、待ち兼ねたみんなが私を抱きしめて笑った。
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しいたけ(プロフ) - 完結おめでとうございます。本当に大好きな作品です。どんな終わりを迎えるのか、終わることの恐さもありましたが、穏やかで温かな気持ちで読み終えまして、この作品に出会えた幸せを噛み締めました。ありがとうございます。お疲れ様でした！ (2020年10月12日 19時) (
レス) id: 6cdb312904 (このIDを非表示/違反報告)
みほ(プロフ) - 完結おめでとうございます！ずっと最終話を楽しみにしていました！たまごさんの文学のように作り込まれた世界観や表現が大好きです（ ; ; ）また1話から読み直そうと思います。お疲れ様でした！ (2020年9月24日 10時) (レス) id: 31e8afe04b (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - 完結おめでとうございます！これほどまでに壮大なスケールの夢小説に出会ったのは初めてでした。いくつもの糸が絡み合ったストーリー、どうやってエンディングを迎えるのか、ずっとドキドキしながら読んでました。今はしばらく余韻に浸っていたい気分です。 (2020年9月24日 1時) (レス) id: 64389dcac8 (このIDを非表示/違反報告)
やなこ。(プロフ) - 完結おめでとうございます！ (2020年9月23日 16時) (レス) id: 779424fc05 (このIDを非表示/違反報告)
みんと(プロフ) - たまごさん完結おめでとうございます。嬉しい反面読み進めるワクワクが無くなる寂しさも感じています。何度も何度も読み返したくなる大作だと思いました。これからもたまごさんの書く作品に期待しています。本当にお疲れ様でした。 (2020年9月23日 1時) (レス) id: f635eadff9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2020年6月4日 1時
