精霊の告白３ ページ16
…それからの二人は、なんだか少しおままごとみたいだった
８年前の浮気を引きずり、亡霊のように彷徨っていた元彼なんて私からしてみればどう考えても異常だと思ったし
その彼とまた暮らし始めたAのことは、もっと異常に思えた。
「…結局二人はよりを戻したってこと？」
「いや…そういうのともちょっと違うかな」
「Aー、僕のハンコ知らん？」
「ん？ あー、玄関の棚の中になかった？」
…こうして会うのは三度目だけれど、彼は私の存在などないように取り扱うから(実際A以外見えていないのではないかとすら思う)、
私は“ヤスくん”も居る彼らの部屋で、遠慮することも放棄して正面から疑問をぶつける。
座るAの後ろから首に巻きつき甘えた声で子どものような質問をしていた彼は、
母親のようなAの返答を聞いてパタパタと玄関へと走っていった。
「…ようやくAもまともになったと思ったのになあ…社長が聞いたら泣くよ」
「はは…まあでもこれは私にとっても必要なことだったの」
確かに、彼女と関わった男たちの中で、明確に彼女に落ち度があったことが原因で狂ってしまったと言えるのは彼だけだったし
その彼の傷ときちんと向き合い、共に“生き直す”ことで初めてようやく、先へと進める気になれるという気持ちもわからなくはなかった。
…けど、また共依存的な関係に陥りやしないかと
Aが疾しさや負い目を抱えすぎて過剰に彼に尽くしたりはしないかと。
人と関わって傷つくことを恐れながら
それでも、また人に関わってしまう彼女のことを
私は、密かに心配していた。
…いつまで続くのかわからない関係
恋人ごっこというか、家族ごっこというか…
Aの背中越しに見える彼は窓辺に座り
何かを口ずさみながら遠くを見てふわふわと笑っていて
…その姿は同い年だという割にどこか幼く見えて
時間が止まったままのような…
窓から入る西日に彼の褪せたような金髪が透けている
あまりに無邪気な天使のようで、現実感がないーー…
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しいたけ(プロフ) - 完結おめでとうございます。本当に大好きな作品です。どんな終わりを迎えるのか、終わることの恐さもありましたが、穏やかで温かな気持ちで読み終えまして、この作品に出会えた幸せを噛み締めました。ありがとうございます。お疲れ様でした！ (2020年10月12日 19時) (
レス) id: 6cdb312904 (このIDを非表示/違反報告)
みほ(プロフ) - 完結おめでとうございます！ずっと最終話を楽しみにしていました！たまごさんの文学のように作り込まれた世界観や表現が大好きです（ ; ; ）また1話から読み直そうと思います。お疲れ様でした！ (2020年9月24日 10時) (レス) id: 31e8afe04b (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - 完結おめでとうございます！これほどまでに壮大なスケールの夢小説に出会ったのは初めてでした。いくつもの糸が絡み合ったストーリー、どうやってエンディングを迎えるのか、ずっとドキドキしながら読んでました。今はしばらく余韻に浸っていたい気分です。 (2020年9月24日 1時) (レス) id: 64389dcac8 (このIDを非表示/違反報告)
やなこ。(プロフ) - 完結おめでとうございます！ (2020年9月23日 16時) (レス) id: 779424fc05 (このIDを非表示/違反報告)
みんと(プロフ) - たまごさん完結おめでとうございます。嬉しい反面読み進めるワクワクが無くなる寂しさも感じています。何度も何度も読み返したくなる大作だと思いました。これからもたまごさんの書く作品に期待しています。本当にお疲れ様でした。 (2020年9月23日 1時) (レス) id: f635eadff9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2020年6月4日 1時
