豪雨の忘れ物 ページ26
季節は12月になっていた。
街は目眩を誘うような光と音に彩られ
イベントごとの多さに比例してタイアップの話も多く、締め切りのタイトな仕事が立て込んでいたから、私たちの小さな事務所もその狂騒の渦中にいるようだった。
「ただいまー！ 雨やっばいよ！」
午後4時過ぎ、取材で外に出ていたヒカルがばたばたと、濡れ鼠のような風体で帰ってきて
椅子にかけていたブランケットで雑に身体を吹き始めるから、私は慌てて給湯室に隠していたココアを作りに行く
「はいこれ、温まるよ」
「うわありがと、愛してる」
両国国技館で買ってきたという歴代横綱の名前が書かれたヒカル専用の湯呑みを渡すと、
あちち、と指先をわしゃわしゃしながら彼女は笑った
「あ、A」
「ん…？」
「ちょうどいま電話あって、お客さん。なんか１階のロビーにいるって」
「え…？」
「あ、ごめん名前聞くの忘れちゃった、男の人だったから彼氏じゃない？」
…信ちゃん？
…なんだろう、彼は今日お休みではないはずだし
こんな時間にこの街にまでわざわざ繰り出すとは思えず
伏せていたスマホを確認してもなんのメッセージも入っていないけれど…
“ちょっと出てくるね”と声をかけ、私はエレベーターを降りる
ロビーと言ってもうちの事務所はこのビルのワンフロアを借りているだけだから、
１階、ただエレベーターがあるだけの場所…
「ーー…」
…見渡せどただ しん、と静まり返る灰色のフロア
大雨がコンクリートを打つ音だけが冷たく反響していて
自動ドアの隙間から風が吹き込み、寒いーー…
「ーー…」
…見ると
ついさっきまで外の雨に晒されていたのだろうか
大粒の雫をぽたぽたと滴らせながら
隅の壁に、ぽつんと立てかけられた
青い、
傘がひとつーー…
…
「…ヒカル」
「ん？ どした？ あれ、早かったね」
「…ごめん、その電話の人ってどんな感じだった？」
「あれ、会えなかった？ おかしいな」
「…うん、ねえ、どんな感じの声だった…？」
「え…普通だったよ、Aさんいますかって。男の人、ちょっと訛ってたかな」
ーー…
…何を、されたわけでもないのだ
今のところ
たとえこの傘の持ち主が…ヤスくんだったとしても
或いは、
ヤスくんに見せかけた誰かの仕業だったとしてもーー…
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たまご(プロフ) - okmrernさん» あ、なんか途中で送信しちゃったごめんなさい…！引き続きよろしくお願いします！ (2020年6月2日 17時) (
レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - okmrernさん» okmrernさま、お久しぶりですありがとうございます！ここまでされても私はこの村上信五とつきあいたい (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさま、お久しぶりですありがとうございます！ラスボスは一番そばにいるということでひとつ…！ (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ぐふ。さん» ぐふ。さま、初めてのコメントうれしいですー！！信五最強説です…！そしてビリヤード！素敵ですねそれ…ただ友達がいる設定にしてしまったなあの店員さん…… (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ゆき姉さん» ゆきえさん！コメントありがとうございます嬉しい！ほんとしんどい話でごめんなさいね…いつもありがとうございます！ (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2019年8月18日 23時
