空白の叫び ページ25
「なんも書いてない手紙？」
「…うん」
「何それ、気持ち悪…え、今持ってないの？」
翌日のランチ後、私は街角の喫煙所で煙草を吸うヒカルに意を決して相談を持ちかけた。
何故だか、信ちゃんに相談するのは躊躇われて…
家に置いておくのも嫌で持ち歩いていたから、取り出した二通の封筒を彼女に差し出す
「…ふうん。炙り出しでもなさそーだね」
彼女は咥え煙草をしながら、その空白を太陽に透かす。
「宛名も左手で書いてるっぽくない？ ないしは犯人は幼稚園児だな」
そう言って名探偵はすっかり短くなった吸殻を、ぽーんと灰皿へ投げ込んだ。
「心当たりないの？」
ーー…心当たり
…前回 これが届いた時、頭の中を幾つもの顔が駆け巡った
杞憂だと信じたくて一度蓋をしたけれど
…隆平さん
ううん、たとえ戻ってきたとしても彼がこんなことをするはずがない
…忠義？
前 メモ帳に言葉を残してくれたけど、こんな嫌がらせみたいな形でするとは思えなくて
…錦戸くん
彼なら、あり得る…うちを調べるのも容易いことだろうし
…横山さん
私が彼を忘れて新しい生活を始めていることに失望してーー…？
…渋谷さん
…は、ないだろう、物を残すとは思えないし そもそもあの人は実在したのだろうか…
…ヤスくん
…もし、ヤスくんだったらーー…
ーー…
「…A、あんた相当男に恨み買ってたりする？」
「え…」
「“心当たりありすぎる”って顔してるけど」
「ーー…」
「や、ごめん冗談。まあ同性かもしれないしね、こういう陰湿なことするの」
ヒカルはそう言って“とにかく気にしすぎたら相手の思うツボだよ”と笑い
“気持ち悪いだろうし私が預かっとくわ”とその手紙を引き取ってくれた。
…同性
私は会社まで歩きながらその可能性に思いを巡らす
…ミナミちゃんはまだ、私のことを嫌いだろうか
タカギさんは元気にしているかな
隆平さんのあの、前の彼女はーー…
空白は、鏡だった
私が今まで関わってきた人たちとの関係を映す
“あんた相当恨み買ってたりする？”
…頭に浮かんだ人たちを、“絶対ない”と信頼することすらできない自分を責める叫び声が
手紙の空白から聴こえる気がしたーー…
「…A？ どした？ 大丈夫？」
「…ごめん大丈夫」
道端で立ち止まる私を振り返り
そう声をかけてくれる彼女の優しさだけは、信頼しようと心に決めていたーー…
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たまご(プロフ) - okmrernさん» あ、なんか途中で送信しちゃったごめんなさい…！引き続きよろしくお願いします！ (2020年6月2日 17時) (
レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - okmrernさん» okmrernさま、お久しぶりですありがとうございます！ここまでされても私はこの村上信五とつきあいたい (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさま、お久しぶりですありがとうございます！ラスボスは一番そばにいるということでひとつ…！ (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ぐふ。さん» ぐふ。さま、初めてのコメントうれしいですー！！信五最強説です…！そしてビリヤード！素敵ですねそれ…ただ友達がいる設定にしてしまったなあの店員さん…… (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ゆき姉さん» ゆきえさん！コメントありがとうございます嬉しい！ほんとしんどい話でごめんなさいね…いつもありがとうございます！ (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2019年8月18日 23時
