安息の地２【紫】 ページ21
…私もこんなふうに言ってあげられたらよかった。
“失敗しても私が笑ってあげるから大丈夫だよ”
“隆平さんの完璧じゃないところが好きだよ”
いつだって失敗を恐れていたあの人に。
記憶の中の彼はもう幻のように輪郭が曖昧で
夜中に目が覚めて気付いたら泣いていることも殆どなくなった私は
…あの人と一緒にいた頃の自分と
今こうして信ちゃんと向かい合い
生きるという意志を象徴するお肉を食べている自分が同じ人物だということが不思議に思えて
そんな薄情な自分すらどうしようもなく自分なのだと、そろそろ認め始めていた
「あー！ 食ったわあ！」
「さっきお風呂入ったからこのまま眠れるね」
「んー、幸せやなあ」
そう言って飛び込むようにソファに横になる彼を笑って見届ける
ソラが好機とばかりにソファへ近づく気配がするから
にゃあん、と抵抗する彼女をやすやすと抱き上げ
…さっき彼が何気なく放った四文字の言葉を
ふわふわとした身体に口元を寄せ、小さく呟きながら。
…
今、私のふたつの目から見える景色には
暖かな光の中
ソラがいて
彼がいた
荒れ狂う海を渡り
6つの大陸を彷徨い歩いた私が
最後にたどり着いた
安息の地ーー…
食べること、眠ること、愛を交わすこと
それを喜びと感じる、極めてシンプルな場所…
「風邪ひくよー」
「んー…」
幸福そうに微睡むその顔をちらりと覗き
後でベッドに移動させようと思いながら毛布をかける
食器を片付けてからテーブルを拭いていると、
ふと、さっき端によけたままの郵便物に気が付く。
“お前ん宛の手紙こっち置いとくで”
そういえば…
端の折れ曲がったいくつかの明細やDMの中に、
見慣れぬシンプルな白い封筒…
表に、私の名前だけ書かれた、
消印も差出人もないーー…
私はかたん、と木製の椅子に座る
その拍子に、足元にいたソラが駆けるように逃げ出していく
「ーー…」
封すらされていないそれを恐る恐る開き、四つ折りの紙を広げると
何も書かれていない便箋が一枚、ただ空白を刻んでいた
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たまご(プロフ) - okmrernさん» あ、なんか途中で送信しちゃったごめんなさい…！引き続きよろしくお願いします！ (2020年6月2日 17時) (
レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - okmrernさん» okmrernさま、お久しぶりですありがとうございます！ここまでされても私はこの村上信五とつきあいたい (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさま、お久しぶりですありがとうございます！ラスボスは一番そばにいるということでひとつ…！ (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ぐふ。さん» ぐふ。さま、初めてのコメントうれしいですー！！信五最強説です…！そしてビリヤード！素敵ですねそれ…ただ友達がいる設定にしてしまったなあの店員さん…… (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ゆき姉さん» ゆきえさん！コメントありがとうございます嬉しい！ほんとしんどい話でごめんなさいね…いつもありがとうございます！ (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2019年8月18日 23時
