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浮いた踵 ページ31

「…ごめんな、電話できんくて」


「…うん。私も、ごめん」



「…今、家? ちょっと話せる?」


「…うん。大丈夫」



「…俺な、今から、ハワイ行くねん。ええやろ」


「…偶然だね、私も夕方の便で海外」



「…どこ、行くん?」


「…ニューヨーク、知り合いがいるから」



「…そっか。長くなるん?」


「…うん、たぶん、1か月くらい、かな。もっかいちゃんと、始めたくて」



「…空で、すれ違うかもな」


「…すれ違わないでしょ」




ロビーの端で、壁に向かってひとり座って。

俺はここに誰も、きてくれるなと願う。



両替所に並ぶ人たちよ、

どうか俺に、気づかんでくれと思う。




「…元気で、な」


「…うん、そっちも」



絞り出した言葉が、あまりに陳腐で。


伝えたいことが、ありすぎて見えんくて。




「…じゃあ」


俺は顔ぬぐいながら、そのまま電話を切る。




息整えて、立ち上がり、


歩く。


歩く。




…その足が、


だんだん早くなる。




…その歩幅が、


だんだんでかくなる。





膝が、曲がり




踵が浮く






……俺はしまいに




走り始める



なんも持たんと

走り始める



すれ違う人とぶつかる
謝る声を置き去りにする



俺は



俺は



俺は



走るーーー…




エスカレーター、1階まで駆け下りる
自動ドアくぐり抜けて 外のタクシー乗り場
ちっこい空港のくせに広すぎんねん
都内行きは右端ーー…





「ーーー…錦戸さん!!」





…ああ、タナカくん


追ってきたんか


そんな大声で呼んだらあかんやん





俺は振り返らずにぶっちぎったるって、


でもタナカくん、サッカーやってたんやっけなあーー……









ーー…乗り込む直前、追いつかれて…


俺差し置いて開いとったドアから上半身つっこんで





タナカくんは運転手に

「吉祥寺まで!!」と叫んだ








……



俺は息きらしながら呆気にとられて


彼はそんな俺の、背中押して






「…ずっとここで、待ってるんで。必ず帰ってきてください」








走り出す車の窓から振り返ると


遠ざかるタナカくんが、手を振っていた。

消されていく痕跡【Side Her】→←別れの電話



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たまご(プロフ) - あくあさん» あくあ様、お返事遅くなりごめんなさい…!さすが勘がいいですね…黒さんの過去は次の作品への布石です…が、いまこのお話で疲れ果てているのでいつになるかわかりませんw ゆるやかにお待ちください。゚(゚´ω`゚)゚。 (2018年2月26日 22時) (レス) id: 42d81ca1be (このIDを非表示/違反報告)
あくあ - 読ませてもらってます☆黄色さんの今後が気になりますが、黒さんの過去に興味津々です!笑 (2018年2月24日 4時) (レス) id: 4e4eb3dcc1 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - まなみさん» まなみ様、コメントどうもありがとうございます!楽しんでいただけてるとのこと、とてもうれしいです…!やたら不器用な二人なりの未来、引き続き見守っていただけると有難いです。よろしくお願いします^ ^ (2018年2月23日 16時) (レス) id: 42d81ca1be (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - つぐさん» つぐみ様、ご丁寧にコメントありがとうございます、うれしいです…!もうそろそろ終わりが近づいて参りしたが、どうか最後まで楽しんで頂けますように…!引き続きよろしくお願いします^ ^ (2018年2月23日 16時) (レス) id: 42d81ca1be (このIDを非表示/違反報告)
まなみ(プロフ) - 毎日更新を楽しみにしています!感情と情景が目に浮かびますし、心苦しくもなります。これからよ応援しています、楽しみにしています! (2018年2月23日 15時) (レス) id: 06c59bd95a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たまご | 作成日時:2018年2月16日 14時

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