個人的な事情【黄】２

彼女の事情 ページ21

横山くんに至極真っ当なアドバイスをされてから、俺は地方都市のビジネスホテルのベッドの上で、一人悶々と考えていた。



あいつに、ちゃんと、話して。


ちゃんと付き合ってちゃんとバランスとってちゃんとせな…あかん。



一緒くっついてきとるタナカくんとは、気まずい関係が続いていた。


それでも、あの子は俺がここにおる限り変なことはせんと安心しとるみたいで、
俺はそんなふうに安心させとること自体が、自分の不徳の致すところってやつやんなって…

それくらいはわかっとるねん…。




俺がこんなに毎日会いたくて仕方あらへんのも、毎晩あいつ想い出してうあーって叫びたくなるんも、

目を離したらあいつがどっかいってまいそうやからで… たぶん、知らんけど。



全然好みとちゃうし、一緒に生きてくイメージ湧くかゆうたら、いまだに自信あらへんけど…



…もっと、うまく、やるために。



彼女の協力が…同意が、必要やった。



俺は、それを、もぎ取りに。


一旦東京戻ったタイミングで、いつも以上に慎重に周囲警戒しながらマンション行って

彼女んちで待つ。



…いや鍵、もろてへんから。



つまり、ドアの前、座り込んで待つ。



…鍵、もらうために。




…待ってんのに。




彼女はなかなか帰ってこんくて。



俺は何度も時計見て、会える時間減ってくのにイライラして。


ああああああーーー



そん時、彼女が階段を駆け上がる音が聴こえた。




俺はその瞬間 苛立ち忘れて、うれしくて。





ーー…彼女の事情なんて、考えたこともなかった。

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