ラーメンの抵抗 ページ15
一緒に、外食なんて。
一時も離れたないモードの俺かてさすがにそんな大胆やないし…大通り出る前に、俺はあいつを先に歩かせる。
20メートルくらい離れて、もちろん、帽子とマスクしてから。
俺はなんやストーカーみたいに、あいつの後ろをゆっくりと追いかける。
歩くの、速いねんな。
チャリなら…あるけど。
一緒に外を歩いたことなんてないから。
俺はそれを初めて知る。
だらだら歩く女、嫌いやから。
珍しく俺本来の好みにハマったなと、小さく笑う。
彼女が右に曲がり、俺も遅れて右に曲がる。
彼女が立ち止まり靴紐を結ぶと、俺は電話がかかってきたふりをして立ち止まる。
縮まらない、距離。
俺は彼女の影になる。
彼女が、深夜1時の街に灯りをともす その店の暖簾をくぐる。
俺はきっちり3分待ってから、暖かい店内へと入る。
くの字になったカウンターが8席しかあらへん、狭い店。
空腹を刺激する脂の匂いと、義務的に流れ続ける深夜のバラエティ番組。
先客は彼女含め3人やった。
全員一人客で、各々のラーメンとだけ向かい合っている。
「らっしゃいませー」
俺は入り口で食券を買い、右奥にひとり座っている彼女から一席を空けて、隣の隣に腰掛ける。
目ぇ伏せたまま帽子もとらんと店員に食券渡し、何食わぬ顔でスマホを取り出し、時間をつぶす一人客を演じる。
彼女の前にラーメンが置かれ、左手に座っていた客の一人が「ごちそうさん」と言った。
…日本中にありふれた、平和な夜中のラーメン屋の光景。
彼女が音も無く、麺をすする気配がする。
こいつでも、もの、食うんやなあ…
俺はその様子を観察したくなるのをこらえる。
「おまたせしましたー」
俺の前にも、カロリーの爆弾。
しばらく、勢いよく搔き込んで。
「ごっそうさまですー」
もう一人の客が、そう声をかけ帰った時。
…俺は箸を左手に持ち変える。
とんとん。
右隣の座席を小さく叩く。
店員に気づかれへん程度に。
とんとん。
彼女がそっと こちらを伺う気配がする。
俺は右手の指先で、小さく手招きをする。
彼女は、少し逡巡してから。
その左手を…小さく伸ばす。
俺の右手と、彼女の左手。
指先だけ、そっと椅子の下でつながれて。
そして俺たちはまた、ラーメンと向き合う。
左手ですするラーメンは…生きてんのかと思うほど
食われるもんかと、俺に抵抗した。
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たまご(プロフ) - あくあさん» あくあ様、お返事遅くなりごめんなさい…!さすが勘がいいですね…黒さんの過去は次の作品への布石です…が、いまこのお話で疲れ果てているのでいつになるかわかりませんw ゆるやかにお待ちください。゚(゚´ω`゚)゚。 (2018年2月26日 22時) (レス) id: 42d81ca1be (このIDを非表示/違反報告)
あくあ - 読ませてもらってます☆黄色さんの今後が気になりますが、黒さんの過去に興味津々です!笑 (2018年2月24日 4時) (レス) id: 4e4eb3dcc1 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - まなみさん» まなみ様、コメントどうもありがとうございます!楽しんでいただけてるとのこと、とてもうれしいです…!やたら不器用な二人なりの未来、引き続き見守っていただけると有難いです。よろしくお願いします^ ^ (2018年2月23日 16時) (レス) id: 42d81ca1be (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - つぐさん» つぐみ様、ご丁寧にコメントありがとうございます、うれしいです…!もうそろそろ終わりが近づいて参りしたが、どうか最後まで楽しんで頂けますように…!引き続きよろしくお願いします^ ^ (2018年2月23日 16時) (レス) id: 42d81ca1be (このIDを非表示/違反報告)
まなみ(プロフ) - 毎日更新を楽しみにしています!感情と情景が目に浮かびますし、心苦しくもなります。これからよ応援しています、楽しみにしています! (2018年2月23日 15時) (レス) id: 06c59bd95a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たまご | 作成日時:2018年2月16日 14時